無線センサーネットワークは、IoT(モノのインターネット)を支える基盤技術の1つだ。“IoT向け”という点を考慮すると、無線センサー端末の「完全体」というのは、外部からの充電が不要で、設置箇所に半永久的に放置できるものになるだろう。その「完全体」に近い端末を、米国のミシガン大学が試作している。
IoT(Internet of Things)時代(モノがインターネットを介してつながる時代)を支えるインフラストラクチャ技術(基盤技術)に、無線センサーネットワーク(WSN:Wireless Sensor Network)がある。無線通信機能を備えたセンサー端末(「無線センサー端末」)が、他のセンサー端末、ハブ、あるいはホストに、センサーの取得したデータを送信する。ネットワークを構成する無線センサー端末の数量や配置などを工夫することで、用途に応じたさまざまなデータ収集システムを構築できる。
無線センサーネットワークが膨大な容量のデータを収集すれば、それは「ビッグデータ」になり得るし、膨大なデータをインターネット経由でストレージに保存すれば「クラウド」になり得る。もちろんこういった大規模なネットワークだけではなく、無線センサー端末とスイッチで構成される簡素な自動制御ユニットも実現できる。
無線センサー端末は自律的に動作する1個のサブシステムであり、必然的にいくつかの要素を必要とする。まず、センサー機能と無線通信機能は欠かせない。次に、端末を動かすための電源機能、それから端末を自律的に動かすための制御機能がそれぞれ必要となる。それから、電気エネルギーを蓄えておくための蓄電機能が欠かせない。この他、無線センサー端末は一般的に、小型で軽いことが求められる。
無線センサー端末を実現するときにオプションとなりがちなのは、給電機能だろう。例えば充電済みの電池を備えた無線センサー端末では、給電機能を省くことがある。この場合、電池は一次電池(再充電が不可能な電池)となり、電池の寿命が尽きると無線センサー端末は機能を停止する。いわゆる「使い捨て」である。このような無線センサー端末では、無線通信機能や制御機能などの消費電力を極めて低く抑えておくことで、電池の寿命を1年あるいは2年といった長い期間で確保しようとする。このため、消費電力に関する制約が非常に厳しくなることが多い。
これに対し、外部から電力を供給して電池を適切なタイミングで充電することで、半永久的に動作する無線センサー端末を実現するオプションがある。無線センサー端末の電池は二次電池となり、その他に非接触の給電機能(受電機能)を搭載する。二次電池の残量を監視する必要があり、また充電作業が負担にはなるものの、「使い捨て」タイプに比べると消費電力の制約はそれほど厳しくせずに済む。
理想的には、外部からの充電作業を不要にすることで、設置箇所に半永久的に放置しておける無線センサー端末を実現するオプションが存在する。このような無線センサー端末が、「完全体」に近いと言えるだろう。「完全体」に近い端末を実現するための、ほぼ唯一と考えられている手段は、発電機能と蓄電機能(二次電池)を搭載することである。小さく、軽く、充電が不要で、自律的に動作し、無線でのみ外部とデータをやり取りし、半永久的な寿命を有する。技術的な難しさは高まるものの、ほぼ理想的な端末と言える。
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