本シリーズは、次々世代のMOSFETで非シリコン材料がチャンネル材料の候補になっていることを説明してきた。最終回は、本シリーズのまとめであるCMOSデバイスの実現手法と試作例を紹介する。従来と同様のCMOSデバイスを非シリコン材料で実現する手法は2つある。
本シリーズではこれまで、次々世代のMOSFETでは非シリコン材料がチャンネル材料の候補になっていること、非シリコン材料の候補にはゲルマニウム(Ge)とインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)があること、Geではnチャンネル型FETとpチャンネル型FETが試作されていること、InGaAsではnチャンネル型FETが試作されていること、などを説明してきた。本シリーズのまとめである今回(最終回)は、CMOSデバイスの実現手法と試作例をご報告する。
シリコン(Si)MOSFETのCMOSデバイスはn型MOSFETとp型MOSFETで構成される。非シリコン材料をFETのチャンネルに組み込んだとしても、従来と同様にCMOSデバイスを実現しなければならない。ここでCMOSデバイスの実現手法は2つある。1つは、Ge FETだけでCMOSデバイスを構成する手法である。Geチャンネルのn型FETとp型FETを組み合わせることで、様々なCMOSロジックを構成する。もう1つは、n型FETにInGaAsチャンネル、p型FETにGeチャンネルを採用するCMOSである。
原理的には後者のCMOSが、高速・高周波性能は高くなる。ただし異なる材料を採用することでデバイス構造と製造工程は、複雑になる。すなわち、原理的には製造コストが増加する。デバイス構造の実現手法には、Ge層のウエハーとInGaAs層のウエハーを貼り合わせる、Si基板(ウエハー)から横方向に結晶をエピタキシャル成長させる、といった方法が考えられている。
Ge FETだけでCMOSデバイスを構成する研究では、簡単な論理ICを試作した成果が出ている。2014年12月に国際会議IEDMで、米国のパデュー大学(Purdue University)がGe FETのCMOS論理ゲートをSi基板上に試作してみせた。
試作したCMOS論理ゲートは、インバータ、NANDゲート、NORゲートである。いずれの論理ゲートも動作することを確認した。ただし、現在はゆっくりと動作させた段階である。動作速度を考慮するのは今後になる。
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