2015年9月、医療や行政、ドローンなど各分野のプロフェッショナルが集まり、救命の連鎖をテクノロジーによって補完するプロジェクト「Project Hecatoncheir」が日本で始まった。
「私たちのミッションは明確です。無人機(ドローン)を通して人の命を救うことです」――10年間に渡って救急隊員、消防隊員として活動し、今回紹介するプロジェクトのリーダーを務める小澤貴裕氏はこう語る。
2015年9月、医療や行政、ドローンなどのプロフェッショナルが集まり、救命の連鎖をテクノロジーで補完するプロジェクト「Project Hecatoncheir」が始まった。
「命を救うために必要なのは救命までの時間を縮めることだ」と小澤氏は語る。救命において倒れた人を助けるためには「チェーン・オブ・サバイバル」(救命の連鎖)という概念が重要だ。(1)「心停止の予防」(2)「早い119番通報」(3)「早い心肺蘇生と除細動」(4)「救急隊や病院での措置」が連続性をもって行われることが必要という意味である。
しかし、心肺停止の約60%が家庭内で起こっており、もし家で1人だったときには、119番通報の時点で既に手遅れになる場合が多い。また、AED(自動体外式除細動器)のような除細動器を設置している家庭は多くないだろう。心肺停止に陥った人が助かる確率は、救急隊員到着時間の全国平均8分30秒では10%。救急隊員による処置があったとしても20%の救命率しかない。小澤氏も10年間の救急隊員経験で“歩いて帰った人”はたったの3人だったという。
小澤氏は、「この手遅れになる場合が多い救命の連鎖を補完したい」と語る。119番通報は、GPS情報とバイタルサインを合わせることで実現が可能だ。例えば、スマートフォンやウェアラブル端末などに搭載されているセンサーを通じて、心停止を感知する。心停止を感知したら、それらの端末にあるGPS機能を活用することで、周りに誰も人が居なかったとしても救急隊員が現場に行くことができる。
心肺蘇生と除細動を早くするためにはどうしたらいいのだろうか。そこで登場するのが、ドローンである。119番通報によって得られた位置情報を用いて、ドローンでAEDを運ぶのだ。また、ドローンにカメラを搭載することによって、救急隊員が現場に居合わせた人や発見者と言葉を交わしながら指示することが可能になる。
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