本シリーズでは、毎年8月に米国で開催される「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」から、フラッシュメモリの最新動向に関する講演内容をお届けする。まずはNAND型フラッシュメモリの価格と、SSDの現状について見てみよう。
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フラッシュメモリ業界で最大のイベントは、毎年8月に米国カリフォルニア州シリコンバレーで開催される「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」である。このイベントでは、フラッシュメモリとその応用製品(メモリカードやSSDなど)に関する、数多くの講演が実施された。その中から、フラッシュメモリの最新動向に関する講演が参考になったので、その概要をご紹介したい。
講演者は、半導体の調査会社Objective AnalysisでアナリストをつとめるJim Handy氏、講演タイトルは「Flash Technology : Annual Update」である。講演では4つのテーマを取り上げた。(1)NANDフラッシュメモリの市場動向、(2)SSD、(3)NORフラッシュメモリの市場動向、(4)3D Xpoint(クロスポイント)メモリ、である。
「(1)NANDフラッシュメモリの市場動向」では、最初にNANDフラッシュメモリの市場規模の推移をグラフで示した。2006年〜2009年に100億〜150億米ドルで伸び悩んでいたNANDフラッシュメモリ市場は、2013年〜2014年には270億〜280億米ドルへと拡大した。
続いてNANDフラッシュメモリの容量当たりの単価(ギガバイト単価)がどのように推移してきたかをグラフで示した。2011年1月にはギガバイト単価は約1米ドルだった。そこから1年でギガバイト単価は急速に低下し、2012年1月に半分の約0.5米ドルとなった。同年7月には、ギガバイト単価は約0.3米ドルにまで下がった。その後、ギガバイト単価は持ち直し、2013年〜2014年は0.3〜0.5米ドルの間を行き来する展開となった。2014年末からはギガバイト単価はゆっくりと低下し、2015年始めには0.25米ドルを切ってきた。
単価の落ち着きと価格の安定はNANDフラッシュメモリのベンダーに大きな利益をもたらした。安定状態はいつまで続くのか。Handy氏は2017年に入るまでは、安定期が続くと予想する。3D NAND技術による大容量NANDフラッシュメモリの量産が順調に進んだ場合に、2017年にはNANDフラッシュメモリの供給が過剰となる恐れがある、とする。
ただし、3D NAND技術のような革新的かつ難しい技術に挑んでいる状態から、いつ抜け出すかを予測することは簡単ではない。量産化で先行しているSamsung Electronicsは、3D NAND製品に関しては損失を出しながら生産を続けている状態である。NANDフラッシュ大手は2017年に3D NAND製品の量産が立ち上がると予測しているものの、こういった予測はたいていは楽観的な見通しによるものだと指摘する。量産の立ち上がりが2017年以降にずれ込む可能性は少なくない。
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