QualcommとHuaweiが、V2X通信向けの規格として、LTEをベースとした「LTE V2X」を提唱するという。V2X通信における現在の主流は、IEEE 802.11pをベースとしたDSRC(狭域通信)だ。LTE V2Xは、新たな規格係争の火種となるのだろうか。
セルラー技術関連の大手であるQualcommとHuaweiが、新しいLTE規格「LTE V2X」を提唱するという。現在まだ初期の段階にあるV2V(Vehicle-to-Vehicle)やV2I(Vehicle-to-Infrastructure)といったV2X(Vehicle to Everything)市場への参入に向けて、力を入れていきたい考えだ。
自動車技術メーカー各社は、これまで10年以上にわたってV2V/V2I通信向けDSRC(Dedicated Short Range Communications:狭域通信)技術の開発・試験に取り組み、現在ようやく実装段階にたどり着いたところだ。このため、今回のQualcommとHuaweiの動きは、こうしたメーカー各社との対立を招くことになる可能性がある。
IEEE 802.11p規格をベースとするDSRC技術は、専用の無線周波数として、5.9GHz帯(75MHz幅)を使用する。これは、米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)が1999年に、ITS(高度道路交通システム)用として割り当てたものだ。
一方、LTE V2Xの提唱者らは、V2Xの基盤として、LTEベースのセルラーネットワークインフラを推奨している。D2D(Device-to-Device:端末から端末)としても知られるLTE-D(LTE Direct)によって、LTE V2X開発向けに優れた基盤を提供することができると主張する。
LTE-Dは、500mの範囲内に存在する数千個のデバイス/サービスを検出することができるため、ネットワーク内の近接したLTE-D対応デバイスを、2台以上で相互通信させることが可能だという。
このような技術開発の結果、自動車業界への足掛かりをつかむために、次世代移動通信の5Gに期待をかけているメーカー各社と、DSRC技術の推奨派との間で、コネクテッドカーをめぐる対立が起こるようになった。
EE Timesは、フランスのボルドーで2015年10月5〜9日に開催された「ITS World Congress 2015」(10月5〜9日、フランス・ボルドー)において、複数の自動車技術メーカーにインタビューを行った。その結果、これらの企業のほとんどが、HuaweiとQualcommに対し、土壇場になって代替となるV2X通信技術を推奨してきたことについて、明らかに不満を抱いていることが分かった。
NXP Semiconductorsの自動車事業部門でCTO(最高技術責任者)を務めるLars Reger氏は、「DSRCは、現在既に大きな進歩を遂げている。長年にわたって数々のフィールドテストに合格してきた技術として、今まさに新しいコネクテッドカーで採用されようとしているところだ。一方、現在もまだ開発段階にあるLTE V2Xが、新しい規格として完成し、テストを通過して自動車業界で承認されるようになるころには、DSRCに対して大きな後れを取っているだろう」と述べている。
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