Samsung Electronicsが、Qualcommの新世代プロセッサ「Snapdragon 820」の製造を全面的に委託したもようだ。Samsungの最新プロセス技術である「14nm Low-Power Plus(LPP)」を適用する。
Samsung ElectronicsとTSMCは、世界最先端の製造技術を適用するファウンドリ事業で接戦を繰り広げてきたが、FinFETプロセスではSamsungが一歩リードしている。Samsungは、14nm FinFETプロセスの第2世代である「14nm Low-Power Plus(LPP)」を適用するプロセッサの製造で、Qualcommからの受注を一手に引き受けることになったのだ。
Samsungは2016年1月14日(韓国時間)に発表したプレスリリースで、14nm LPPプロセスを適用した最先端プロセッサの量産を開始したと発表した。
香港のMaybank Kim EngのアナリストであるWarren Lau氏によると、「Qualcommは、2年前はプロセッサの約20%をTSMCに委託していたが、2017年以降は、ほぼ全てのプロセッサをSamsungの14nm/10nmプロセスで製造するとみられる」という。
Lau氏はEE Timesへのメールの中で、「Samsungは、Qualcommが今後製造する全ての14nmチップセットとモデムの単独サプライヤーになる。この契約は10nmプロセスでも続くとみられる」と述べている。
Samsungは、「14nm LPPプロセスでQualcommの『Snapdragon 820』プロセッサを製造する。Snapdragon 820は、2016年上半期に発売予定のモバイル製品に初めて搭載される見通しだ」と発表している。
Samsungは2015年第1四半期に14nm Low-Power Early(LPE)を適用した「Exynos 7 Octa」プロセッサを発表した*)。さらに、「『Exynos 8 Octa』プロセッサの製造には新しい14nm LPPを適用する計画だ」と述べていた。
*)関連記事:Samsung 14nmプロセッサ「Exynos」に刻まれた文字から探る
Samsungの発表と日を同じくして、TSMCは「16nm/14nm市場における当社のシェアは、2015年は50%だったが、2016年は70%に増加する見通しだ」とする予測を発表している。TSMCのCo-CEO(共同最高経営責任者)であるC.C. Wei氏は、「2016年は16nmプロセッサの需要が増加し、当社の売上高の約20%を占める見込みだ」と予測している。
MaybankのLau氏は、「TSMCの16nm FinFETプロセッサの最大顧客であるAppleは、同プロセス技術を適用して、2016年に『A10(仮称)』プロセッサを製造する予定とみられている。さらに、2017年には『A11(仮称)』の製造も計画している」と述べている。この他、台湾のMediaTekも、TSMCの16nm FinFETプロセスを採用する計画を明らかにしている。
SamsungとTSMCはそれぞれ、低価格のFinFETプロセスの開発を手掛けており、両社の競合関係は今後も続くとみられる。
TSMCは、2015年第4四半期に16nm FinFET Compact(16nm FFC)の開発を完了し、2015年半ばに低消費電力で低価格の16nm FinFETプロセッサを発表した。同社は、2016年第1四半期中に16nm FFCプロセッサの製造を開始するとみられる。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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