パナソニックは2016年1月20日、京都大学の「Center of Innovation(COI)」と共同で、非接触で心拍間隔を計測する生体情報センシング技術の開発に成功したと発表した。スペクトラム拡散ミリ波レーダーを用いて、心電計相当の精度で心拍間隔をリアルタイムに計測できるという。
パナソニックは2016年1月20日、京都大学の「Center of Innovation(COI)」と共同で、非接触で心拍間隔を計測する生体情報センシング技術の開発に成功したと発表した。同技術は、パナソニックのスペクトラム拡散ミリ波レーダー技術と、COIの心拍推定アルゴリズムによって実現。心電計相当の精度で心拍間隔をリアルタイムに計測できるという。パナソニックは同年1月28日、COIとともに同技術に関する説明会を開催した。
パナソニックのレーダーはミリ波を用いている。ミリ波は30G〜300GHz帯の電磁波であり、高分解能や広帯域、耐環境性といった特長があり、衣服などを通過するため服を着ているときや寝ているときでも計測できる*)。また、符号の信号変化を見てノイズを抑圧しながら生体情報だけを抽出する「スペクトラム拡散処理」を行うことで、測定範囲の限定や複数人の同時計測が可能になるといった特長も持つ。
*)今回は60GHz帯を活用。今後は79GHz帯も視野に入れて帯域を広げ、感度を上げていきたいという。
しかし、ミリ波レーダーによるバイタル信号測定には、いくつかの課題がある。1つ目は、レーダー信号には呼吸や心拍、体動などのさまざまな動きによる信号が重畳されていることだ。体表面の変位で見ると、呼吸が1mm〜50mmに対して、心拍は0.1mm〜0.5mm。心拍の変位は微小過ぎて、さまざまな動きの信号が重畳されたレーダー信号のデータから、心拍だけを検出するのは困難なのである。
パナソニックの基盤技術研究部で主席研究員の務める酒井啓之氏は、「フィルターによって呼吸成分を除去することで、心電図と相関のある波形が得られるが、周期関数のような波形ではないため、心拍間隔を推定することは困難であった」と語る。
そこで用いられるのが、京都大学が開発した心拍間隔を推定するアルゴリズムである。
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