産業機器分野においてIoT(モノのインターネット)を普及させる手段の1つとして、「IEEE 802.1 TSN(Time Sensitive Networking)」と呼ばれる次世代規格の標準化が進んでいる。標準イーサネットの拡張版である同規格は、コストや相互運用性などの面でメリットを生み出す可能性がある。
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産業分野においても、IoT(モノのインターネット)を積極的に取り入れる動きは高まっている。産業用IoT向けのネットワークとして、標準化が進められているのが「IEEE 802.1 TSN(Time Sensitive Networking)」(以下、TSN)だ。TSNは、車載でも使用されている標準イーサネット規格であるEthernet AVB(IEEE802.1 Audio/Video Bridging)を拡張したもので、10Gビット/秒の帯域幅や、1マイクロ秒以下の低遅延の実現を目指している。National Instruments(NI)の日本法人である日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)が、同社の注力分野「NIトレンドウォッチ2016」を紹介する説明会(2016年1月26日)にて、TSNの概要を説明した。
NIは、産業用IoTを注力分野の1つに据え、機器の状態監視向け計測プラットフォームなどを展開している。同社は、インダストリアル・インターネットやIoT関連の推進団体であるIIC(Industrial Internet Consortium)のメンバーでもある。
日本NIのマーケティング部でシニアテクニカルマーケティングマネジャーを務める岡田一成氏は、産業用IoTについて「工場内部のネットワーク接続だけでなく、自動制御されるトラクターなどのスマートマシンやスマートグリッド、測定器などが相互に接続されるシステムが構築されるようになるとみられている」と説明する。
だが、相互接続されるとなると問題になってくるのが、現在、産業分野で使われているネットワークには独自規格のものが多いという点だ。これは、要求される遅延が、アプリケーションによって異なるからである。
例えば、化学工場でポンプの開閉を制御するようなプロセスオートメーションでは、遅延は1秒程度でも許容される。だが、自動車工場や精密機器工場などで何十個ものモーターを同期制御するといったFA(ファクトリーオートメーション)やモーションコントロールの世界では、数十〜数百ミリ秒、場合によっては1ミリ秒以下の遅延性能を要求される。そのため、低遅延が要求される分野では独自規格のネットワークが多く採用されてきた。
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