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鳥取の事例にみる、地方製造業“再生”の可能性勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(14)(1/5 ページ)

本連載の最終回となる今回は、筆者が鳥取県で行ってきた、雇用創造プロジェクトの支援活動を通じて見えてきたことを紹介したい。素直に考えれば、雇用を創出するには、事業創出/事業拡大が必須になる。だが少ない人口、少ない資金に悩む地方圏の企業には、立ちはだかる壁が幾つもあるのだ。

» 2016年03月22日 11時30分 公開
[世古雅人EE Times Japan]

「1年後にはクビ!」――企業をダメにする補助金・助成金の“ばらまき”施策

 これまでも、いわゆる「ばらまき政策」といわれるものは、政治の世界では何度となく行われてきた。“ばらまき”の目的の多くは、消費拡大に伴う経済活性化や増税に伴う一時的な給付金のようなものだ。

 省庁においても同様で、経済産業省や厚生労働省は、事業や雇用を生み出すものは補助金や助成金と称し、企業に対して支給を行ってきた。

 ばらまきだろうが、補助金/助成金(以下、表記は補助金に統一)だろうが、政治家ではない筆者がとやかく言うべき問題ではないが、少なくとも原資は税金であるが故に、その使途が適切なものであるかについては問われるべきものだと考える。実際、必ずしも本来の目的が達成できていないがために、「ばらまき」といわれるのではないだろうか。

 さて、中小企業や零細企業からすれば、新製品の開発に伴う開発費や設備投資費の捻出や、人材不足にあえぐ企業からすれば、事業費用の何分の1かでも補助がもらえたり、人を採用してお金がもらえたりする(正規雇用創出奨励金など)のであれば、これほどありがたい話はないだろう。その一方で、本来の目的とは異なる用途で補助金が使われるケースも少なくなく、採用においては、補助金をもらって1年後にはクビにするということを繰り返すあくどい企業もいるのが現状である。

 ここで問題なのは、これらの補助金が果たして企業のためになっているのか、ということだ。しかも、「短期的な観点ではなく、中長期的な観点で、企業の成長としてとらえた場合で」という前提条件を付けておく。そうなると、1年後にはクビにするという、先述した会社は、短期的な目先の補助金に目がくらんだとしか言いようがなく、元から、社員を育てる気などこれっぽっちもなかったということになる。

 これらの企業は、今後も何度でも同じことを繰り返す傾向が強く、明らかに法律に違反をしていない限り、取り締まりも困難でせいぜい勧告にとどまる。当然、企業の成長や発展は見込めないが、それでも、補助金をもらい続けることができれば、会社としては成り立つ。しかし、こういう企業に税金が使われていると考えると個人的には面白くない。皆さんはどう考えるだろうか?

産業の裾野が広がらない地方圏

 現在、試験飛行段階に入っている三菱航空機を筆頭に開発・製造が進められている次世代旅客機であるMRJ(Mitsubishi Regional Jet)は、製造業にだけでなく、日本にとっても明るい話題で、MRJに対する期待はとりわけ大きい。

 帝国データバンクの調査によれば、大手重工4社(三菱重工、川崎重工、富士重工、IHI)を除く、航空機の航空機部品製造、航空機エンジン製造を手掛ける「主要部品メーカー」は全国に200社弱、存在する。さらに、これら企業の取引先となる部品・素材などの「下請けメーカー」が750社ほどあることが分かっている。これらの企業が、数百万点に上るともいわれる航空機の部品を作っているわけだ。2011年のデータによれば、主要部品メーカーでの売上高合計は約4300億円で、地域的には「中部」が主な稼働拠点である。同様に、下請けメーカーの売上高合計は約9300億円で、主に「関東」が活動拠点であり、全体企業の約9割が3大都市圏に集中している。その一方で、地方圏には産業の裾野がまったく広がっていないことが指摘されてきた(図1参照)。

図1 航空機の主要部品メーカーと下請けメーカーの地域分布 図1 航空機の主要部品メーカーと下請けメーカーの地域分布 (クリックで拡大) (出典:TDB 「航空機部品メーカーの実態調査」 2013年2月)
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