東北大学金属材料研究所の教授を務める藤原航三氏らによる研究チームは、高品質の単結晶シリコン(Si)を低コストで製造できる技術「LCZ法」を開発した。2020年の発電コスト目標として掲げられている14円/kWhを実現する技術の1つになるとみられている。
今回の研究は、東北大学金属材料研究所 結晶物理学研究部門の藤原氏および結晶材料化学研究部門の宇田聡教授、FTB研究所、産業技術総合研究所(産総研)、福島再生可能エネルギー研究所再生可能エネルギー研究センター太陽光チームの福田哲生招へい研究員、高遠秀尚チーム長らが共同で行った。
研究チームは、単結晶シリコンの製造方法として新たにLCZ法を開発した。一般的に用いられているMCZ法では、石英るつぼの外部から磁場を作用させながら結晶を成長させていた。しかし、この方法だと製造コストを低減することが難しかった。
LCZ法は、シリコン融液をはじく特殊な処理を施した「溌液るつぼ」と呼ぶ石英るつぼを用いつつ、結晶製造条件を最適化した。LCZ法を用いると従来のように磁場を作用させる必要がないという。
溌液るつぼは、FTB研究所が発明した技術で、るつぼ内壁の表層(溌液層)に特殊な処理を行い、融液をはじく性質を持たせた。この技術をベースに東北大学金属材料研究所との共同研究などにより、改良を重ねてきた。
研究チームはLCZ法を用いて、直径200mmの単結晶シリコンを製造することに成功した。この方法だと、新規の設備投資がほとんどいらず、品質もMCZ法で製造した単結晶シリコンと同等、あるいはそれ以上の単結晶シリコンを製造できることが分かった。
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