2020年の商用化スタートに向けて、5G(第5世代移動通信)の規格化が進んでいる。世界各地での協力体制が、これまでよりも必要になりそうだ。
5G(第5世代移動通信)の標準規格に関するミーティングが今週(2016年4月11日の週)、世界各地において開催され、エンジニアたちが幅広い提案事項について真剣に検討を進めている。無線ネットワークのあらゆる側面について、これまでのどの世代のセルラー規格よりも幅広く取り上げていくことから、今後少なくとも2年間を要する取り組みになるとみられる。
5G規格の策定を手掛ける3GPPは、まず数十個のスタディーグループにそれぞれ業務を割り当て、無線アクセス技術からネットワークアーキテクチャに至る幅広い項目に対応していくとしている。各スタディーグループは日本、韓国、インド、フランス、メキシコ、クロアチアなど世界各地で開催されている。
TMobileのネットワーク技術開発/戦略担当バイスプレジデントを務めるKarri Kuoppamaki氏は、2016年4月12〜13日に米国カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto)で開催された「5G Forum」において、インタビューに応じ、「まるで、巨大な食べ物を小さく切り分けながら食べているような状態だ。新しい技術を開発するためには、大勢の人々の力が必要になる」と述べた。
通信事業者たちは、5G規格を実現することで、より強力かつ柔軟なネットワークを構築したい考えだ。仮想化を利用して、標準サーバ上でオープンソースソフトウェアを動作させ、さまざまなタスクを実行していくという。このため5Gは、サーバ向けチップやシステム、ソフトウェアを手掛けるメーカー各社にとって、セルラー業界において重要なポジションを確立できる要素になりそうだ。
通信事業者(キャリア)各社は、既存のLTEネットワークと連携しながら、よりスムーズに動作できるよう、ネットワークをアップグレードしたいと考えているが、一方で、新興企業のCohere Technologiesが提案した、新しいエアーインタフェースに興味を示すなど、急進的な新しいアイデアに対しても門戸を開いている。
同インタフェースに対して、AT&TとChina Mobile、Deutsche Telekom、Telefonica、Telstraが共同で資金提供するとしていることからも、これらのキャリアが、現行のOFDM(直交周波数分割多重方式)でバリエーションを作ろうとしていることが分かる。
China Mobileの研究グループでチーフサイエンティストを務めるChih-Lin I氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「Cohere Technologiesとの間で共同契約を締結したのは、新たな活力を吹き込み、より柔軟な新しい考え方を得たいためである。個人的に最も興味深かったのは、時速500kmという高速のモビリティー(移動速度)を目指している点だ」と述べている。
Cohere Technologiesで戦略的提携/規格担当バイスプレジデントを務めるAnton Monk氏は、「残念ながら、OFDMにマイナーチェンジを加えるだけで十分に満足しているという大企業が多い」と述べている。
3GPPは、各スタディーグループから多くの提案を受ける2016年となりそうだ。2018年には5G規格の第1フェーズとなるRelease 15が発表されるだろう。2つ目の大きなフェーズは、2019年後半のRelease 16になる予定だ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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