富士通研究所は2016年4月18日、アンモニアなど生活習慣病のマーカー物質とされる特定のガス成分を呼気中から抽出できる小型の呼気センサーを開発した。
富士通研究所は2016年4月18日、呼気に含まれるごくわずかなアンモニアなどの特定のガス成分だけを抽出できる小型の呼気センサーを開発したと発表した。生活習慣病と相関があるとされるアンモニアなどを小型機器で短時間に検出でき、生活習慣病の早期発見に役立つ技術として期待される。
富士通研究所が開発したのは、P型半導体である臭化第一銅の、銅イオンとアンモニア分子が可逆的に結合する性質を利用し、呼気センサー用に臭化第一銅の組成や膜厚を最適化したセンサーデバイスだ。アンモニアからの電子供与で銅のキャリアが減ることで、電極間の電気抵抗が上昇する現象を利用し、その応答を数値化。その結果、呼気に多く含まれるガスの1つであるアセトンに対して、2500倍の感度差で、10ppbからアンモニアだけを区別した計測が行えるとする。
同時に開発したセンサーのもつ高感度特性を活用し、ガスに対する抵抗の立ち上り変化量でアンモニア濃度を定量化する測定アルゴリズムも開発。同アルゴリズムにより、息を吹き込んでから10秒でアンモニア濃度を算出でき、手軽な測定器の実現が可能になったという。
アンモニアは、肝臓の代謝や、胃がんの危険因子であるピロリ菌感染との相関があるとされ、呼気にごくわずかに含まれるアンモニアを検出することで、生活習慣の改善や生活習慣病の早期発見につながる可能性を持つ。ただ、これまでは、ガスクロマトグラフィに代表される大掛かりな分析装置が必要で、分析に数時間を要した。小型なセンサーも存在するが、特定のガスと他のガスとの区別が難しく、「からだの状態の指標を検査する呼気分析としては十分な性能とはいえなかった」(富士通研究所)という。
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