産業技術総合研究所の徐強上級主任研究員らは、棒状やリボン状に形状制御されたナノ炭素材料の新しい合成法を開発した。キャパシターの電極材料への応用などが期待されるナノ炭素材料を、高い収率で量産することが可能となる。
産業技術総合研究所(産総研)電池技術研究部門エネルギー材料研究グループの徐強上級主任研究員とプラディープ パッチファルJSPS(日本学術振興会)特別研究員らは2016年5月、棒状やリボン状に形状制御されたナノ炭素材料の新しい合成法を開発したと発表した。この合成法を用いると、キャパシターの電極材料への応用などが期待されるナノ炭素材料を、高い収率で量産することが可能になるという。
新たに開発したのは、配位高分子を原料として用い、カーボンナノロッドやグラフェンナノリボンといったナノ炭素材料を簡便かつ高い収率で合成する方法である。これまで一般的に用いられてきたグラフェンナノリボンの合成法は、電気化学処理やプラズマエッチングなどによるカーボンナノチューブの剥離/展開によるものである。この方法だと「工程が複雑で収率が低く、大量のエネルギーを消費する」といった課題があった。
産総研はこれまで、多くの金属イオンと有機配位子が連結された構造の固体材料である配位高分子について、その新たな応用開発に取り組んできた。今回は、配位高分子を原料に用いて、カーボンナノロッドとグラフェンナノリボンを簡便に、高い収率で合成することに成功した。
新開発の合成法では、金属塩(酢酸亜鉛)と2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(架橋配位子)から配位高分子を合成する際に、金属塩を連結できない配位子(非架橋配位子)であるサリチル酸を加えた。配位高分子の特定方向の成長を抑制するためである。これによって、棒状の配位高分子を合成することができた。この棒状の配位高分子を、不活性気体中で加熱処理(1000℃)すると、棒状のカーボンナノロッドを形成することができた。このカーボンナノロッドを水酸化カリウム(KOH)水溶液中で超音波処理した。その後、不活性気体中で800℃の熱処理で活性化したところ、カーボンナノロッド中で棒状に積層したグラフェンが解きほぐされ、グラフェンナノリボンを生成することができた。
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