東北大学は2016年5月14日、全固体リチウムイオン電池用負電極材料として、黒鉛電極の2倍以上の電気容量を実現する新材料を開発したと発表した。
東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の磯部寛之氏らの研究グループ*)は2016年5月14日、全固体リチウムイオン電池用負電極材料として、黒鉛電極の2倍以上の電気容量を実現する新材料を開発したと発表した。新材料は、ナフタレンをもとに作られた「穴あきグラフェン分子」(CNAP)で、充放電を65回繰り返してもその大容量は完全に保たれたという。
*)東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の磯部寛之主任研究者(JST ERATO 磯部縮退π集積プロジェクト研究総括、東京大学大学院理学系研究科教授)、佐藤宗太准教授と折茂慎一教授の共同研究グループ
リチウムイオン電池の負電極材料としては、長く黒鉛(グラファイト)が用いられてきた。最近では、黒鉛よりも電気容量が2倍〜3倍大きくできる可能性のあるナノカーボンやカーボンナノチューブといった新しい炭素材料に注目が集まり、研究開発が進められている。しかし、ナノカーボンは「いろいろな構造体の混ざり物であるがために、大容量化の原理、指針を解き明かすことができない。ナノカーボン負電極の再現性の高い大容量化や、さらなる大容量化を実現するための妨げとなっており、その研究は“トライ&エラー”による手探りで進めざるを得なかった」(研究チーム)という。
そうした中で、磯部氏らの研究チームは、2011年に設計、合成した穴あきグラフェン分子が、リチウムイオン電池の大容量電極材料になることをこのほど発見したという。
同分子の固体による電極と、固体電解質を用いて電池を作ったところ、電気容量・リチウム容量は黒鉛の電極に比べ2倍以上に達した他、65回の繰り返し充放電を行っても、完全に容量が保たれ、「とても優れた材料であることが分かった」(研究チーム)という。
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