Googleが、人工知能(AI)に向けたアクセラレータチップ「Tensor Processing Unit(TPU)」を独自開発したことを明らかにした。同社が2015年にリリースした、オープンソースのアルゴリズム「TensorFlow」に対応するという。
このニュースは、米国カリフォルニア州マウンテンビューで2016年5月18〜20日(現地時間)に開催された同社の開発者向けイベント「Google I/O 2016」で行われた、2時間に及ぶ基調講演の最後に、大きな目玉として明かされた。
GoogleのCEO(最高経営責任者)であるSundar Pichai氏は、「当社が開発したTPUは、既存のFPGAやGPUに比べて1ワット当たりの性能が10倍高い。韓国のトップ棋士を打ち負かした当社の囲碁AI『AlphaGo(アルファ碁)』も、TPUを使用していた」と述べている。
Googleの著名なハードウェアエンジニアであるNorm Jouppi氏が投稿したブログによると、TPUは、Googleのデータセンターで1年以上前から使われているという。同氏は、「TPUは既に、Googleのさまざまなアプリケーションに搭載されている。例えば『RankBrain』では、検索結果の関連性を向上させるために、また『Street View』では、地図やナビゲーションの精度・品質を高めるために活用している」と述べている。
TPUは、サーバラックのハードドライブスロットに挿入するためのモジュールに搭載される。Jouppi氏によると、最初の試験を行ってからわずか22日後に、TPUを動作させることに成功したという。同氏はかつて、HP(Hewlett Packard)やDigital Equipmentにおいて、サーバ/プロセッサ開発に携わった経歴を持つ。
Jouppi氏は、「TPUは、AIアルゴリズムの本質に基づき、演算の精度を抑えることで、計算に必要なトランジスタ数を減らし、1秒当たりの性能を高めることに成功した」と述べる。
今回の開発プロジェクトは、数年前に始動したという。Googleはここしばらくの間、半導体を専門とするエンジニアを雇用し続けてきたが、その目的については隠し通してきた。TPUを既にシステムで動作させているにもかかわらずだ。
AI専用のアクセラレータチップを一番乗りで開発したのは、Googleではない。例えばNervana Systemsは、独自開発のAIアクセラレータをベースとしたクラウドサービスの開発を手掛けている他、Movidiusも、組み込みアプリケーション向けの商用チップを独自に開発していて、最近ではハイエンド版をリリースすると発表したところだ。
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