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特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

すべてのIoTデバイスに「Bluetooth」を製造業×IoT キーマンインタビュー(2/3 ページ)

» 2016年06月20日 11時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

1軒の家をくまなくカバーできる無線に

EETJ Bluetoothはこれまで、PCやスマートフォンと、その周辺機器を結ぶ無線として進化し、通信距離に関しては、あまり問われてこなかったと思います。

パウエル氏 Bluetoothとして、通信距離を延ばすということに、力点を置いたのはBluetooth 5が初めてだ。繰り返しになるが、通信距離が長いBluetoothへのメンバー各社の要望が大きく、通信距離が100mの通信速度2Mビット/秒、ないし1Mビット/秒の高速通信モードと別に、通信速度125Kビット/秒の長距離通信モードを用意した。これはメンバーが、スマートホーム、さらには、IoTを実現する上で、Bluetoothに長い通信距離を求めたことに他ならない。

 余談だが近日中にも、Bluetooth 5とは別に、プロトコルのオプションとして(ノード間で転送が行える)メッシュ通信機能をリリースする。Bluetooth 5とメッシュ機能により、Bluetoothは、1軒の家をくまなくカバーできる無線になる。

他のIoT無線規格に勝てるのか?

EETJ IoTに向けた無線通信規格は、ZigBeeやZ-Wave、Wi-SUN、Threadなどなど、乱立しています。そうした中で、Bluetoothは、どこをターゲットに、IoT領域で普及を目指すのですか。

パウエル氏 無線を使用するIoT機器のすべてがターゲットだ。スマートホームに限らず、自動車やビル、工場、インフラなどすべてだ。もちろん、動画など大容量データ転送が求められる用途は除いての話ではあるが。

Bluetooth SIGは、Bluetoothにとって第3の波が到来し、アプリケーションの幅は一気に広がると捉えている 出典:Bluetooth SIG

 個人的には、他の無線通信規格に対し、Bluetoothが勝つと信じている。しかし、重要なことは、他の規格との競争に勝つことではない。メンバーの要望に応えることであり、要望に応えた現状の結果の1つが、Bluetooth 5だ。

IoTでのBluetoothの強み

EETJ なぜ、メンバーはBluetoothに、IoTデバイス対応を求めていると分析されていますか。

パウエル氏 理由は2つある。1つ目は、インターオペラビリティ、相互運用性の高さだ。推計になってしまうが、累計80億台もの相互運用性が確保されたBluetooth対応機器が利用されている。こうした規模の相互運用性が確保された無線規格は他にはない。今後、次々と登場してくるIoT機器をネットワークにつなぐために、最も簡単な無線規格としてBluetoothが期待されている。

 2つ目は、コストだ。累計80億台、2016年だけでも30億台という対応機器が出荷されるBluetoothの市場規模の大きさだ。市場規模が大きければ、大きいほど、(Bluetooth機能を盛り込むための)部品やツールの価格は安くなる。

自動車で実績、「セキュリティレベルは高い」

EETJ IoTの全領域をターゲットにする場合、より高度なセキュリティが要求されます。

パウエル氏 ドアロックなどホームセキュリティ用途レベルからは当然、高度なセキュア機能、信頼性が要求されるだろう。

 Bluetoothは、セキュリティの低い無線と思われがちだ。スマートフォンとヘッドセットの接続などのイメージが強く、それも仕方がないことだろう。

 しかし、われわれは、Bluetooth 4.2で、大幅にセキュア機能を拡張した。具体的には、共通鍵暗号方式である128ビットAES(Advanced Encryption Standard)に対応させた。これは、米国政府の調達基準のセキュリティレベルを満たすものだ。セキュリティレベルは、他の規格よりも劣るどころか、むしろ、優れている無線規格といえる。

 ちなみに、Bluetoothは既に、自動車のタイヤ空気圧警報システム(TPMS)の無線として採用されている。他にも開発段階ではあるが、前照灯の制御などこれまでワイヤハーネスで行っていた車載通信をBluetoothで無線化する動きも加速しており、そうした点でもBluetoothの信頼性の高さを理解してもらえるだろう。

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