時任氏はフューチャーインク社長を務めるとともに、ROELのセンター長でもある。ROELは有機材料に関する先端研究拠点であり、学生も含めて100人以上の規模を持つ。
時任氏と熊木氏は、2010年にNHK放送技術研究所から山形大学へと移り、秘書を含めた4人でプリンテッドエレクトロニクスに関わる研究を進めた。2016年6月現在、約20社の企業との共同研究を行い、学生やスタッフを含め50人規模の研究室になったとする。
「私たちの研究室の特長は、材料やデバイスなどを一体的に開発できる体制と設備を持っていることだ。今まで企業と共同で開発してきた成果を集積し、ポートフォリオごとにフューチャーインクで事業展開していく予定である」(時任氏)
同社は今後、印刷技術を用いた事業だけでなく、TFTを組み込んだ軽量でフレキシブルなヘルスケア用途のセンサーデバイスの開発を進める。「特に、市場の成長が期待できる圧力センサーとバイオセンサーをターゲットにする。2017年中には、全て印刷で開発したシート型圧力センサーを試作品レベルで展開する予定」(熊木氏)と語る。
また、時任氏と熊木氏は、研究の傍らボランティアで事業を行っている。2016年6月1日現在、役員6人を除いた社員は2人だ。そのため、2016年中に資金調達を行い、社員を募集する。「設立3年で、売上1億5000万円を超えることが目標」(熊木氏)とした。
米国が国防総省が(DoD)フレキシブルエレクトロニクスに総額1億7100万米ドルの投資を決めるなど、市場の拡大が予想されるプリンテッドエレクトロニクス市場。海外では、食品管理や車載センサーに応用されているケースが既にあるという。
国内では、次世代プリンテッドエレクトロニクス技術研究組合(JAPERA)が2011年3月に設立され、関連メーカーが全印刷TFTを用いた大面積圧力センサーや電子棚を開発している。
時任氏は、「国内もプリンテッドエレクトロニクスに対する期待感は大きいが、一足飛びにはいかないため、関連メーカーが粛々と研究開発をしている状況だ。国内の大手企業は保守的で、なかなか新しい技術を導入しようとしない。そのため、台湾や韓国などで導入しようとする動きがある。中堅メーカーを中心にもちろん挑戦はしているが、全般的な雰囲気として保守的だ。大手のメーカーが、印刷技術で新製品を量産するといった発表をすれば、流れは一気に変わるだろう」と指摘した。
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