今回は、自動車のエレクトロニクスシステム、具体的には、ADAS(先進運転支援システム)およびクラスタ・ダッシュボード、車載インフォテインメントで使われるメモリを解説する。さらに、これらのメモリの5年後のロードマップも見ていこう。
「国際メモリワークショップ(IMW:International Memory Workshop)」のショートコースで、Micron TechnologyのFellowであるWill Akin氏が、「Memory System Overview」と題してメモリシステムの現状と将来を用途別に解説した内容を紹介するシリーズの第2回である。
前回(第1回)は、スマートフォンやメディアタブレットなどのモバイル機器のメモリシステムを説明した。今回からは、クルマのエレクトロニクス(自動車エレクトロニクス)を支える半導体メモリを解説する。
クルマのエレクトロニクスシステムは大きく3つに分けられる。1つはパワートレイン(エンジンや変速機など)である。もう1つは、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)およびクラスタ・ダッシュボード(統合計器盤)である。最後の1つは、車載インフォテインメント(IVI:In-Vehicle Infotainment)システムである。
パワートレインのメモリシステムは、他の2つとは大きく違う。まずメモリは単体では存在せず、マイクロコントローラー(マイコン)に埋め込まれる。具体的には、NOR型フラッシュメモリを内蔵したマイコン(フラッシュマイコン)となる。
本稿(本講演)で扱うのは、残りの2つのシステムである。ADASとクラスタ・ダッシュボードのメモリをまず説明しよう。NOR型フラッシュメモリとDRAM、SLCタイプのNAND型フラッシュメモリを使う。車載カメラのサブシステムは、高信頼で高速のDRAMを要求する。システムをブートするコードの容量が増加していることから、大容量のフラッシュメモリ(NOR型あるいはNAND型)が必要とされている。
使用温度範囲は自動車用の−40℃〜105℃とかなり広く、半導体デバイスにとっては厳しい。要求される寿命は12年から15年とこれも厳しい。そして不良率は100万個当たりでゼロであることが求められる。このため誤り訂正(ECC)機能を備えることになる。この他ドライブレコーダー向けに、eMMCといった大容量のフラッシュストレージが必要になることもある。
IVIシステムでは、DRAM、NOR型フラッシュメモリ、NAND型フラッシュメモリ、eMMCを使う。マルチストリームの動画データを扱うことから、広帯域のメモリバスが必要となる。使用温度範囲は工業用の−40℃〜85℃である。要求される寿命は5年〜8年くらいになるとみられる。
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