Ericssonは、モバイル通信市場を包括的に分析したレポート「エリクソン・モビリティ・レポート」を年に2回発行している。同社の日本法人であるエリクソン・ジャパンは2016年7月5日、同レポートの最新版となる2016年6月版の内容を説明する記者発表会を行った。モバイル通信市場の最新動向に加え、3GPPによる5G(第5世代)標準化活動のアップデートについても説明した。
5G(第5世代移動通信)において最も重要な論点の1つとなっているのが、使用する周波数帯域だ。2015年に開催された「World Radiocommunication Conference(WRC)」では具体的な結論を出すまでには至らなかったが、5G向けとして検討すべき周波数帯として、ミリ波帯を中心に7つ*)が挙げられた。
*)24.25〜27.5GHz、31.8〜33.4GHz、37.0〜43.5GHz、45.5〜50.2GHz、50.4〜52.6GHz、66〜76GHz、81〜86GHz
ただ、エリクソン・ジャパンでCTO(最高技術責任者)を務める藤岡雅宣氏は、「これらの限られた周波数帯だけで5Gを実現するのは難しく、国際的に周波数を協調していくことが重要」だと述べる。藤岡氏によれば、現在最も有力な帯域は28GHz帯だという。ここは米国と韓国が5Gの試験運用で利用しようとしている帯域だ。日本は、3.6GHz〜4.2GHz帯、4.4GHz〜4.9GHz帯、27.5GHz〜29.5GHz帯を提案していて、中国では3.5GHz帯を試験運用で利用する動きがある。この他、米国と欧州はIoT(モノのインターネット)機器向けに、それぞれ600MHz帯と700MHz帯を利用することも検討している。
藤岡氏は、これに加えて、基地局のバックホールやエントランス回線で利用する周波数についても、世界的な協調が必要だと述べる。日本では光ファイバーが利用されているので、ここはあまり関連がないところだが、世界的に利用されている周波数帯は6GHz〜80GHzと、マイクロ波からミリ波に及ぶ。そのため、世界で最も使われている周波数帯がどこなのかをよく検討する必要がある。
同氏は、3GPPの最新のワークプランで、幾つか大きな合意があったと述べた。まず「5Gは、LTE進化版とNR(New Radio)で構成し、両社は互換性を持つようにする」ということ。もう1つはNRの基本パラメータおよびフレーム構成として、「サブキャリア周波数間隔として15kHz×2nを基本的な設計原則とする」ということである。この際、2nの「n」は負の数でもいいので、例えば15kHz、30kHz、7.5kHz、3.75kHzなどが挙げられる。ただ、5Gの試験運用に向けて準備を進めている米国の大手キャリアVerizonは75kHz(15kHz×5)を使うという。藤岡氏は、「これは設計原則から外れているので、気になる点だ」と述べた。
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