IHS AutomotiveのJeremy Carlson氏は、今回の3社提携にIntelが参加したことに驚いているという。
Carlson氏は、「MobileyeのプロセッサにIntelのCPUを組み合わせて自動運転車の“コンピュータ”とするような、シンプルなプラットフォームが登場するのではないかと期待される。だが、情報が十分でないため、現時点ではそれが実現するかどうかは判断できない」と述べている。
3社が共同発表したプレスリリースでは、Intelの役割は明記されておらず、「数十億個にも上るコネクテッドデバイスを駆動し、接続する包括的な技術ポートフォリオに期待している」という、ばく然とした表現にとどまっていた。
Intelの役割は、自動運転車の内部というよりも、インフラ側にあると考えた方が、より納得がいくかもしれない。
IHS Technologyで車載半導体分野の主席アナリストを務めるLuca De Ambroggi氏は、「Intelは、コネクティビティおよびテレマティクス技術やIoT(モノのインターネット)技術を提供する」と推測している。同氏は、「こうした技術を活用して、自動運転車をクラウドに接続し、地図データやデータポイントの収集や検索、分析、AI(人工知能)アプリケーションによるパターン認識を行うと考えられる」としている。De Ambroggi氏は、「Intelはインフラ構築のノウハウを強化するために参加した可能性が高い」と指摘している。
具体的には、De Ambroggi氏は、Intelのコプロセッサ「Xeon Phi」の次世代版(開発コード名:Knights Landing)に言及している。Intelは、2016年6月19〜23日にドイツのフランクフルトで開催された「International Supercomputing Conference 2016」でKnights Landingを発表した。
Knights Landingは、72コアで構成され、動作周波数は1.5GHz、16Gバイトの統合スタックメモリを備える。Knights Landingは既に、数台のスーパーコンピュータ向けに設計を完了しているという。
Intelはこれまで、ディープラーニングに関しては、どちらかといえば沈黙を貫いていた。だが、Knights Landingの投入によって、急成長するディープラーニング市場に参入したい考えであることは明らかだ。
ディープラーニング市場はこれまでは、NVIDIAの独壇場だった。Intelは、イメージングニュートラルネットワーク「Caffe Alexnet」のトレーニングを完了したKnights Landing4基で構成したシステムを使って、同社のディープラーニング技術の優位性を披露した。Intelによると、Knights Landingは10時間半で13億3000万画像を処理できるのに対し、NVIDIAの最新GPU「Maxwell」4基で構成したシステムは同等の処理に25時間かかるという。
米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでシニアアナリストを務めるMike Demler氏も、De Ambroggi氏の見解に同意している。同氏は、「Intelは今回の3社の提携の下、NVIDIAの『DIGITS』のようなディープラーニングシステムの開発とデータセンターの構築を目指していると考えられる」と述べている。Demler氏はプレスリリースの中で、Mobileyeが慎重に言葉を選んでいる点にも注目している。Mobileyeは、「自動運転車のアルゴリズムには、当社の障害物検知用の高性能画像処理プロセッサ『EyeQ』が採用されると考えているが、Intelのプラットフォームの開発にも協力する」と述べている。
Demler氏は、「Mobileyeの自動運転支援システム『Road Experience Management(REM)』はリアルタイムにクラウド接続する必要があるため、Inelは同システムでも自社の技術を発揮したい考えだ」とも述べている。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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