イスラエルのVayyar Imagingが開発した「3Dセンサー技術」は、超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)無線周波数を利用して、対象物を画像化するものだ。乳がんの検査用に開発されたこの技術は、ガス管の検査からセキュリティチェック、高齢者の見守り、食品の組成検査まで幅広い分野に応用できる可能性がある。
2011年に設立されたイスラエルの新興企業Vayyar Imaging(バイアー・イメージング、以下Vayyar)は、超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)無線周波数を利用するアクティブセンサー用半導体ICを開発した。具体的には、RFフロントエンド回路、CPU、メモリ、インタフェース(SPI、SerDes、ホストバスインタフェース)を搭載したSoC(System on Chip)と、10MHz〜20GHzの周波数に対応したアンテナで、同社はこれらを「3Dセンサー技術」として提供する。
物体を検出する仕組みはレーダーと同じだ。測定対象物に向けて複数のアンテナから電波を放射し、対象物からの反射波をアンテナで捕捉。反射波から割り出した対象物までの距離をマッピングして、3次元(3D)のイメージを作り出す仕組みだ。同社でビジネス開発担当ディレクターを務めるOfer Familier氏は、「一般的に“3Dセンサー”というとレーザーを用いたものを想像すると思うが、われわれの技術はRF信号を使うという点で異なる」と説明する。
Vayyarはもともと、3Dセンサー技術を乳がん検査のために開発した。乳がん検査には幾つか方法があるが、最も精度が高いといわれるマンモグラフィーは痛みが伴う上にX線を使用する。超音波検査では痛みはほとんどないが、年齢によっては、乳がんかどうかの判別が難しい場合がある。何とか、より高精度で痛みを伴わない乳がん検査装置を開発したい――。Vayyarが3Dセンサー技術の開発を始めたのは、こうした思いからだったとFamilier氏は語る。
Vayyarは、3Dセンサー技術を用いた乳がん検査システムのプロトタイプを、スマートフォンサイズの機器で実現した。Familier氏によれば、看護師が機器を患者の胸に近づけると5秒以内で3D画像を得られるという。
Vayyarによると、4〜5mm以上の腫瘍であれば検知可能だ。既に70人の女性に試してもらっている。同社によれば、その精度は「母数が少ないのだが、20人の患者を検査すればその全員の腫瘍を検知できるレベルまでは達している」という。今後は、母数を増やして検証を進めていく予定だ。
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