Tesla Motorsの「Model S」で、自動運転中に死亡事故が発生した。同社にビジョンプロセッサを提供していたMobileyeはこれを受け、Teslaへのチップ供給は現行の「EyeQ3」で終了する予定だと発表した。MobileyeのCTOは、半導体メーカーと自動車メーカーの関係性は変わる必要があると述べている。
Tesla Motorsの「Model S」で2016年5月、オートパイロット機能で走行中に死亡事故が発生した。これを受け、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)と米国家運輸安全委員会(NTSB:National Transportation Safety Board)が現在も、この事故原因に関する調査を進めているさなかだ。
しかし、衝突防止技術を手掛けるMobileyeの共同創設者でありCTO(最高技術責任者)を務めるAmnon Shashua氏は今週(2016年7月25日の週)、同社の2016年第2四半期の業績発表の会場において、Teslaに関するコメントを述べ、誇り高き技術メーカーである両社の間で、親密な関係が終わりを告げたことを明らかにした。同氏は、技術メーカーが今後、来たる自動運転車の時代に「安全性」を実現する上で何をすべきなのかについても語っている。
自動運転車市場では、TeslaやMobileyeだけがリーダーシップを独占しているわけではない。それぞれの技術を1つのシステムに統合し、それが安全に機能するかどうかを判断するためには、業界全体で真の協業体制を構築する必要がある。しかし、自動車業界が現在、このような体制を整えているのかどうかは不明だ。
MobileyeのShashua氏は、業績に関するカンファレンスコールの中で、「Teslaへのチップ供給は現行の『EyeQ3』プロセッサで終了する予定だ」と発表した。
チップメーカーが顧客企業との協業関係を切り捨てるなど、正気の沙汰とは思えないようなことであるため、Shashua氏の発言は大きな注目を集めた。
同氏のコメントは、以下の通りである。
「当社の見解としては、今後さらなる進展を遂げていく上で、優れた自主性を実現することにより、複雑化する機能と、極めて高い安全性の確立を求めるニーズの両方において、パラダイムシフトが起こるとみている。現在、Mobileyeの名誉が危機にひんしているだけでなく、業界全体が危険にさらされている状況にある。
Mobileyeは、目標を達成する上で、機器メーカーとのこれまでの協業関係を超えるパートナー提携が必要だと確信し、2016年7月1日にBMWとIntelとの協業を発表した。当社は今後も引き続き、このような協業関係を構築していきたいと考えている」
市場調査会社であるIHS Markitで車載用半導体担当主席アナリストを務めるLuca De Ambroggi氏は、「Shashua氏のコメントから、Mobileyeが、Teslaの死亡事故に対して距離を置きたい考えであることがよく分かる。自動運転だけでなく、ADAS(先進運転支援システム)も“安全性”との関連が強いため、誰もが認める業界リーダーであるMobileyeにとっては、妥当な選択だといえる」と述べている。
Shashua氏は、半導体メーカーと自動車メーカーとの関係を変化させる必要があると主張し、次のようにも述べている。
「われわれは協業関係の中で、ただ技術を提供するだけで使用方法については管理しないというのではなく、技術の使い方に関するあらゆる側面に関与していく必要がある」
Shashua氏が求める、「対等な立場に基づいた提携を実現する」という展望は、多くの半導体メーカーにとって、非常に斬新な考えなのではないだろうか。しかし、機器メーカーが定期的に半導体メーカーに対して価格圧力をかけているという、現行の“顧客/供給メーカー”の関係に慣れてしまっている企業にとっては、それを実現できるのは次世代になるかもしれない。
Mobileyeは今後、自動運転プラットフォームの実現に向けて、BMWとIntelとの間で2016年7月1日に締結したパートナー契約を、優先的に推進していきたい考えであることを明示している。
Shashua氏はカンファレンスコールの中で、Mobileyeが、3件のパートナー契約締結を計画していることを明らかにした。「このうちの1件が、BMWとIntelとの協業であり、この他にもまだ2件を予定している。まだ表沙汰にすることはできないが、2016年末までには発表できる見込みだ」と述べている。
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