大阪大学産業科学研究所の関谷研究室を中心とする医脳理工連携プロジェクトチームは2016年8月、手のひらサイズの「パッチ式脳波センサー」を開発した。冷却シートを額に貼る感覚で容易に装着でき、脳の状態をリアルタイムに可視化することができるという。
大阪大学産業科学研究所の関谷研究室を中心とする医脳理工連携プロジェクトチームは2016年8月、冷却シートを額に貼る感覚で容易に装着でき、脳の状態をリアルタイムに可視化できる、手のひらサイズの「パッチ式脳波センサー」を開発したと発表した。個人の持つ最大能力(潜在力)を常に発揮できる「脳マネジメントシステム」の実現に向けて、開発した脳波センサーを活用していく計画だ。
大阪大学COI(Center of Innovation)拠点は、医学や脳科学、理学、工学が連携(医脳理工連携)して脳機能を解明し、人間の状態(感情やストレスの状態)との因果関係を明らかにするための研究を行っている。その上で、人間のさまざまな状態に応じた活性化の手法を開発し、社会に提供する脳マネジメントシステムの研究開発に取り組んでいる。
脳の状態を検知するためには、脳波測定を行うのが一般的である。しかし、これまでの医療用脳波計は、ケーブルでつながれた複数の電極を、頭部全体に装着する必要があった。しかも、導電ゲルを頭皮に塗布しなければならないなど、被測定者への負担がとても大きかった。とりわけ、電極を頭部全体に長時間装着し続けておくことは困難で、特に子供の脳波計測は極めて難しかったという。
そこで開発チームは、柔軟な電極とシート状ワイヤレス計測モジュールなどからなる、手のひらサイズのパッチ式脳波センサーを開発した。冷却シートを額に貼るような感覚で、脳波センサーを装着することができるという。しかも、これまで脳波測定に用いられていた大型の医療機器と同等の高い計測精度が得られることも確認している。一例だが、睡眠中の脳波測定において、2Hz以下の遅い脳波(徐波)を検出できたという。
開発チームによれば、パッチ式脳波センサーを用いると、電子体温計で体温を測るように、自宅で脳の活動を毎日手軽に計測することが可能となり、収集したデータから睡眠の質と生活習慣病との関係性などを明らかにできるという。また、認知症を含む脳関連疾患の早期発見/予防にもつながる可能性が高いとみている。さらに、脳波センサーで取得したデータは要介護者の見守り、自動車運転者の体調管理などにも応用できるという。
なお、大阪大学COIプログラムでは、脳マネジメントシステムの一例として、将来は家庭で脳波を測定し、その結果に基づいて個人の状態を分析。個人の状態に応じた活性化手段を用いて、個の潜在能力を常に発揮できるシステムの実現を目指している。
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