Intersilの主力は、電源用半導体を中心にしたアナログ半導体だ。ルネサスも、これまで「アナログ&パワー事業」として同半導体を展開してきたが、マイコンやSoC事業に比べ、世界的な競争力は弱かった。そうした点で、Intersilは、ルネサスにとって、事業を補完する“良きパートナー”であることは間違いない。
地域別売上高を見ても、Intersilは、地元米国とアジアが大半を占め、逆に日本や欧州での売り上げ規模は小さい。ルネサスがIntersil製品を扱うことで、日本や欧州での売り上げ拡大も十分見込める。さらに、Intersilは、産業機器向け、宇宙航空向け、サーバ向けなどを得意とするものの、自動車向けの売り上げ規模は小さく、ルネサスが自動車向けでテコ入れできる余地は小さくない。
ルネサスとIntersilは補完関係にあるものの、懸念材料もある。
まず、アナログ半導体市場におけるルネサスの存在感はIntersilを買収しただけでは、あまり増さないだろう。現状、アナログ半導体市場におけるルネサスのシェアは2%程度であり、Intersilのシェアは1%程度。合わせても、3%程度にとどまる。一方で、アナログ半導体メーカーの再編が進んでいる。ON Semiconductorは、間もなくFairchild Semiconductorの買収を完了させる見込みである上、Analog DevicesはLinear Technologyを買収することで合意した。アナログ半導体シェア上位企業のM&Aにより、ルネサスはIntersilを買収しても、シェア上位陣との差は開くことになる。
「アナログ半導体市場は寡占化進んでいる。そこに一石を投じる千載一遇のチャンスだった」(呉氏)とするが、今回の買収はその“寡占化するアナログ半導体市場”で生き残るための挑戦権を得ただけにすぎない。生き残りを図るためには、相当な勢いで、Texas InstrumentやAnalog Devices、Infineonなどのシェア上位陣を追い上げなければならない。
まだ再編途上のアナログ半導体分野での売り上げ規模、シェアを考えるのであれば、もう1段のM&Aを仕掛ける必要がある。だが、ルネサスには、その余力はあまりないだろう。従って、ルネサスはIntersil買収効果を最大限、かつ、迅速に発揮しなければならないことになる。
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