Intel(インテル)のグループ会社である日本アルテラは、東京都内で「インテルSoC FPGAデベロッパー・フォーラム(ISDF)」を開催した。SoC FPGAの製品戦略などについて、これまでの方向性を踏襲していくことを表明するとともに、会場では“インテル色”を全面に打ち出した。
Intel(インテル)のグループ会社である日本アルテラは2016年11月1日、東京都内で「インテルSoC FPGAデベロッパー・フォーラム(ISDF)」を開催した。本稿では、IntelのFPGA戦略などに触れた基調講演を中心に、その概要を紹介する。
Intelは、2015年12月にFPGA大手のAltera(アルテラ)を買収した。現在、旧Alteraを母体とする「プログラマブル・ソリューション・グループ(PSG)」が、FPGA事業を展開する。2016年9月末よりサンプル出荷を始めたハイエンドFPGA「Stratix 10」は、「Intel」ブランドによる初めてのFPGA製品となる。今回のISDF会場でも、インテル色を全面に打ち出すなど、新体制が目に見える形となって表れてきた。
基調講演は、Intel PSGプロダクトマーケティング&プランニング担当の副社長を務めるAlex Grbic氏が行った。Grbic氏は、2016年8月に米国サンフランシスコで開催された「ISDF 16」で、IntelのCEO(最高経営責任者)を務めるBrian Krzanich氏が行った基調講演について、その内容を紹介した。
Grbic氏は冒頭、新体制への移行に伴う顧客の不安などを払拭する狙いから、FPGA事業に対するIntelのコミットメントを紹介した。FPGAに対する開発投資やビジネスの継続、Alteraが提示していた製品ロードマップの継承、ARMコア搭載FPGA製品の継続、製品の長期供給体制の維持、そして高水準のサービスとサポート体制の継続など、FPGAに対するこれまでの戦略や方針を、基本的に踏襲していくことを強調した。
続いて、Intelの戦略とFPGAの位置付けについて説明した。デジタルとフィジカルが融合するなど、あらゆる環境でデジタル変革が進展する。農業機械や産業用機器、ヘルスケア機器、車両など全てのIoT(モノのインターネット)デバイスは、ネットワークを経由してクラウド、データセンターにつながる。クラウドで解析されたデータは機器にフィードバックされ、よりよいユーザーエクスペリエンスを実現することができるという。
収集する現場のデータ量が増加していけば、ゲートウェイやデータセンターにおいて、極めて高い処理性能を備えたシステムが求められるようになる。このような「成長に向けた戦略的サイクル」において、同社はFPGAやメモリを中核製品と位置付ける。データ処理量の増加による演算のボトルネックを解消していくために、FPGAの柔軟性とパフォーマンスが重要となるからだ。
講演では、産業機器/IoT、クラウド/データセンター、ネットワーク/移動体通信といった用途におけるパフォーマンスの改善など、SoC FPGAを応用した具体的なユーザー事例を紹介した。
最後に、SoC FPGAのビジョンについて紹介した。「FPGAに組み込むデフォルトプロセッサはARMコアである」ことを重ねて強調した。その判断理由として、「ユーザーの理にかなっている」と述べた。これとは別に、Intelアーキテクチャ(IA)プロセッサとFPGAファブリックをワンパッケージに実装した製品も用意している。高い性能が必要とされるデータセンターなどで活用されているという。
Intelは、旧Alteraが展開してきた製品戦略やサポート体制を引き継ぐ方針を示した。これに加えて、新たなメリットもユーザーに提供される。その1つがソフトウェア開発環境である。例えばOpenCLのサポートについて、Intelのソフトウェア開発環境でFPGAに対応することが可能となった。
もう1つは、Intelが特許を持つパッケージ技術「EMIB(Embedded Multi-Die Interconnect Bridge)」を活用できることだ。FPGAコアファブリックとそれ以外のアナログ、メモリ、ASIC、CPUなどのチップを、単一のパッケージに統合できるSiP(System in Package)技術を用いて、さまざまなビルディングブロックを組み込んだ製品を開発することができる。
Grbic氏は、「IntelのSoC FPGA製品には、素晴らしいポテンシャルがあり、エンベデッドコンピューティングの中核をなす製品である。われわれの将来は明るい」と述べ、講演を締めくくった。
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