採択された日本からの論文件数は、産業界から8件、大学から6件の合計14件にとどまった。前回は24件(このうち企業から19件)で、米国に次ぐ2位の採択件数となったが、今回はそれを大きく下回った。井上氏はこの要因として、「企業からの投稿数が激減したのが大きな理由だと考えている。論文のクオリティーが低下したわけではない」と分析する。
関係者も、「日本の半導体企業は構造改革に取り組んでいる。企業における投稿数が減少したのは、単に投稿するタイミングだけの問題である」と話す。一方で、大学からの採択件数は前回の5件に対して、今回は6件に増えた。「先端研究の内容も、かつてはプロセス技術の傾向が強かった。近年は用途に特化した開発成果に注目が集まっている。このため大学の存在価値が高まってきた」と述べる。
世界的にみても、企業からの論文は減少している。2017年は全体の62%が大学からの論文発表となる。この比率は過去最高だという。地域別にみると、北米では約70%が大学からの発表である。アジア地域でもその傾向は強く、68件のうち41件が大学からの発表となっているものの、企業からの論文も27件と健闘している。
論文は、「ワイヤレス通信」や「アナログ」「IMMD(Imager、MEMS、Medical、Display)」「RF」など、10のカテゴリーに分類されている。「ワイヤライン通信」の採択論文数が前回より5ポイント下がった。その分はワイヤレス通信などの構成比が高まったものの、特筆するような大きな変動はなかったという。採択論文を分野と地域性で見ると、アジア地区は、イメージャーやメモリといった分野で圧倒的強みを持っている。アナログやワイヤレス通信分野でも存在感を示す。
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