MEMS製品やARMマイコンに強みを持つSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)。同社のCEOであるCarlo Bozotti氏は、FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)などが、他社との差異化技術になると強調する。
STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス、以下ST)のCEOであるCarlo Bozotti氏は、半導体メーカーとしての同社の歴史において、非常に困難な時期を主導してきた人物だ。
同氏は最初に、モバイルプロセッサの合弁企業ST-Ericssonを設立したが、これが最終的に失敗に終わり、ST-Ericssonを解消して手を引かざるを得なくなったという過去がある。しかし、STは現在、不良債権処理や事業再編、製品の段階的廃止などをほぼ完了させ、再び成長を回復させようとしているところだ。EE Times Europeは今回、ドイツ・ミュンヘンで開催された「electronica 2016」(2016年11月8〜11日)において、Bozotti氏にインタビューを行った。
Bozotti氏は、「IMF(国際通貨基金)は世界GDP予測の下方修正を発表したが、市場は上向いている。2016年第3四半期(7〜9月)の受注は好調で、同年10月も同じ傾向が続いている。幅広い分野において上昇傾向がみられる」と述べている。
しかし、さまざまな数値を分析したところ、2016年第3四半期におけるSTの主要な事業部門の売上高は、前年同期比でわずかに減少している。売上高が全体的に増加した主な要因としては、Time of Flight(ToF)方式の距離画像センサーが好調だったことが挙げられる。
Bozotti氏は、「2016年第3四半期の売上高は、前年比で12.2%増加し、出荷受注比率(BBレシオ)は1を上回った。2016年後半には、あらゆる製品グループが、売上高の成長に貢献するとみられる。2016年第4四半期の売上高は、スマートフォンや車載、産業用途向けなどで需要の高まりを受け、前年比11.2%増となる見込みだ」と述べている。
同氏は、「MCUや車載用、特殊イメージセンサーなど、さまざまな分野が売上高成長に貢献している」と指摘する。
では、MEMSについてはどうなのだろうか。MEMSは、ST-Ericssonからの移行時にも、STの製品ポートフォリオの中で最も強力な製品の1つとされてきた。STは、スマートフォンや民生用途向けとして成功を収めたMEMSを、車載/産業用途向けとして成長を拡大していく戦略を掲げている。これは、市場リーダーであるBosch(ボッシュ)が車載用から民生用途向けに方向転換した時よりも、実行するのが難しいのではないだろうか。
この疑問に対しBozotti氏は、「当社はMEMS市場において、確実に成長を遂げている。車載向けとしては、売上高の増加やデザインウィンの獲得など、さらなる取り組みが必要だ。民生市場は、MEMSの売上高を増加させる上で非常に重要な市場だが、以前と比べて大きく多様化している。かつては、1つの顧客企業に対して1つの製品が提供されていたが、現在は、数多くの製品に対して複数の種類のセンサーが普及している」と答えている。
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