Bozotti氏は、「STは、マイコン市場でも成功できると確信している」と述べる。「ディストリビューション市場への参入を最初に実現したのは、当社のARMマイコンだ。当社は現在、700種類のマイコンを取りそろえ、4万社もの顧客企業を抱えている。さらなる拡大に向け、強力なエコシステムが構築されている」(同氏)
同氏は、「シリコン技術は、マイコンにとって欠かせない差異化技術である。当社は現在40nmプロセスを適用しており、次のステップとして、組み込みフラッシュを搭載した、28nmのFD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)の開発を進めている。FD-SOIは、FinFETに比べると、低消費電力で、製造プロセスがよりシンプルであるという利点がある。一方で、埋め込み酸化膜(BOX:Buried Oxide Layer)を含め、ウエハーの加工技術が必要とされる」と語った。
Bozotti氏は、STのARMマイコンが、とりわけ機械学習をサポートするために、どのようなロードマップを考えているのかについては明言しなかった。
同社がさらに強化していくのが車載分野だ。2015年の車載用半導体ランキングにおいて、STは、8%の市場シェアを獲得し、NXP Semiconductors、Infineon Technologies、ルネサス エレクトロニクスに次ぐ4位についている。Bozotti氏は「われわれが既に強い分野、例えばパワートレインやボディー、車載インフォテインメントなどだが、それらに向けた製品開発を進めていく」と述べている。
STは、Sirius Satellite Radioや、Mobileyeなどとパートナーシップを結び、車載インフォテインメントシステムや自動運転向けのマシンビジョン/センサーフュージョンチップ「EyeQ3」などを開発している。「2017年にも市場に投入される予定の『EyeQ4』には、FD-SOIプロセスが適用される。次世代の『EyeQ5』では、7nm FinFET技術が適用され、10個のアプリケーションコアが搭載される予定だ」(Bozotti氏)
もう1社、車載分野においてSTの重要なパートナーになっているのがイスラエルのAutotalksだ。V2X(Vehicle to Everything)技術を手掛けるメーカーである。Bozotti氏は「そしてもちろん、車載向けにわれわれはMEMS技術を保有している」と強調した。
だが、QualcommによるNXP買収は、STの地位を脅かすものになるのだろうか。Bozotti氏は「(買収完了後の)Qualcommは車載分野において重要なプレイヤーになるだろう。だがわれわれの顧客は必ずしも、統合された巨大なプレイヤーを好むわけではない。車載市場におけるQualcommのシェアは大きくない。同市場のシェアランキングは現在と変わらないだろう」と語った。「われわれは、モデムもハイエンドプロセッサも手掛けていない。STは毎年14億米ドルを研究開発に投資し、車載半導体やSiCの開発を極めて戦略的に行っている」(同氏)
Bozotti氏は「当社のFD-SOIプロセスを適用したMobileyeのEyeQ4は、大きな成功を収めている。2017年には多くのハイエンドの自動車に搭載されることになるだろう」と付け加えた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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