図2はApple Watch Series 2のSIP「S2」の外観の様子である。S2は電池側から見ての裏面にS2のマークが施されており、電池側で配線の接続を行っている。また端子面の3分の1程度には、さらにSIP(異形SIP)が搭載され、この内部に新たに加わったGNSSレシーバー(GPSやGLONASSなど)が搭載されている。異形SIP S1からS2への進化に加えて、異形SIPの上に異形SIPが載る、「SIP on SIP=SoS実装」がApple Watch Series 2最大の内部特徴だ。またS2には、S1にはなかった新たな端子が1つ加わっている。この端子はGNSSやBluetoothなどのアンテナ(=フレキシブル基板)に接続され、アルミ筐体の内部の縁に沿うように配置される。
初代Apple Watchからのユーザーとして1年半ほどApple Watchを使っている筆者は、Apple Watch Series 2になって、体感的だが、iPhoneとApple Watchとの通信距離が大きく伸びたと感じている。アンテナの効果なのだろう。
2016年9月に発売されたApple製品は、日本で普及する「FeliCa」(Suicaなど)にも対応した。そのためにiPhone 7ではNXP SemiconductorsのNFC&Apple Payチップ「67V04」が搭載されている。Apple Watch Series 2ではiPhone 7と全く同じ「67V04」がSIP S2の中ではなく、ディスプレイユニットの裏面に配置されている。
しかも両製品ともに、NFC&Apple Payの通信をより精確に行うために「20211CP」という通信補強チップも隣接配置されている。チップは開封してみると2015年の年号が刻まれ、Broadcom製のものであることが分かった。
初代Apple WatchにもNFC機能は搭載されている。初代でのNFCチップはSIP S1の内部に配置されている。しかしApple Watch Series 2ではNFCチップはS2に組み込まれず、ディスプレイ直下の場所に配置されている。図3に初代Apple WatchとApple Watch Series 2の側面構造を示す。
初代とApple Watch Series 2では内部側面構造は反転したものになっている。SIP実装の上下反転によって、センサーまでの配線が短いものから、ディスプレイ側が短いものに変わっている。前回の記事で紹介したiPhone 7の内部も、基板端子の反転を行い、ディスプレイとメイン基板の配線経路を大幅に変更していたが、Apple Watchでも大きな反転がでも行われているというわけだ。
Apple Watchは腕時計型ウェアラブル端末だ。センサー面は腕に装着され、ディスプレイ側が視界、タッチパネルや3Dタッチを用いた触覚に関わっている。2016年10月末から利用可能になったFeliCa通信の場合にも、Apple Watch Series 2とリーダーの間に腕が入る形の通信ではなく、ディスプレイ側をリーダーに接する形での通信が前提とされている。通信精度を上げるためにもリーダーに、より近いところにチップを移動させたものと思われる。NFC&Apple Payチップをディスプレイ側に移動させたことは、Apple Payの普及狙いを鮮明にさせたものだと言ってよいだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.