富士通の飯島淳一氏は、2016年10月に開催された「2016 Advantech Embedded IoT Partner Summit」で、同社工場におけるインダストリアルIoTに向けた取り組みを紹介した。
富士通で映像ネットワークサービス事業部長を務める飯島淳一氏は、2016年10月に台湾・林口で開催された「2016 Advantech Embedded IoT Partner Summit」で、同社工場におけるインダストリアルIoTに向けた取り組みを紹介した。本記事では、島根富士通(島根県出雲市)における工場の製造工程を見える化する取り組みを紹介する。
同工場はラップトップPCの製造を行っているが、製造プロセスにおいて2つの課題を抱えていたという。1つ目は、不良品をモニタリングできないことで出荷遅延が発生することである。2つ目は、不具合が生じた原因の把握に製造プロセスのデータが必要になることだ。
1つ目の課題に対して、同社は修理対象製品にビーコンセンサーを取り付け、製品の位置情報などをリアルタイムで確認する実証実験を行った。
ビーコンセンサーからの情報は、アドバンテックのIoTゲートウェイ「UTX-3115」で収集され、富士通のクラウド「FUJITSU Cloud Service IoT Platform」に上げることで、修理対象製品の見える化を実現。UTX-3115は、Intelのプロセッサ「Atom E3826」が搭載されており、大量のセンサー情報や画像解析に耐えられる処理性能を持つことが特長である。このシステムにより、運送費の30%削減に成功したという。
2つ目の課題に対しても、製造工程を動画や静止画で撮影してテストデータを収集し、不具合品が出たときの挙動をオペレーターが確認することで、原因の特定と再発防止策を防ぐ仕組み作りを構築した。現在はまだテストデータを収集している段階とするが、不具合品の送料を減らすことで、修理コストの削減が期待できるとする。
こちらも、撮影した製造工程のデータはUTX-3115に集約する仕組みとなっており、UTX-3115のOCRアプリケーションからエラーコードが抽出されている。
また、アドバンテックの担当者によると、1つ目の取り組みに関しては「UTX-3115が標準品として採用されており、正式に稼働して数カ月が過ぎている」という。
飯島氏は、講演内で「将来的には、富士通のクラウドサービス『K5』と、アドバンテックの『WISE-PaaS』とのコラボレーションを進めていく」と語る。WISE-PaaSは、収集したデータをクラウドサービスで活用するソフトウェアプラットフォームである。
アドバンテックはWISE-PaaSにおいて、アライアンスを通じたエコシステムの構築を進めている。クラウド分野では、Microsoftの「Microsoft Azure」と日本IBMの「SoftLayer」「Bluemix」、ARMの「mbed」との連携が既に可能だ。
アドバンテックCEOのKC Liu氏は、「これまでのようなクローズな組織ではなく、アライアンスを通じたエコシステムの構築(同社は、“シェアリングプラットフォーム”と呼ぶ)が成長の鍵になる」と同イベント上で述べていた。
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