この他、2016年10月には、Dell EMCとともに、救急隊員の体調(バイタルデータ)と位置を把握する技術の実証実験(Proof of Concept)を行ったと発表した。救急隊員に、心拍などのバイタルデータを取得するためのスマートセンサーを搭載したベストと、位置情報センサーを搭載したブーツを身に着けてもらい、リアルタイムでデータを取得する。全米防火協会(NFPA:National Fire Protection Association)が2016年10月に発表したデータによると、2015年における消防士の負傷件数は約6万8000件だという。そのうち27%が、過度な緊張や疲労の蓄積など、実際の消火活動とは無関係な要因によるものだ。今回の実証実験は、救急隊員のバイタルデータと位置情報をリアルタイムにトラッキングすることで、そうした負傷事故を防ぐことを目的としている。
さらに、セキュリティ技術の分野では、2016年8月にSypris Electronicsのサイバーセキュリティ・ソリューション(CSS)部門を買収すると発表した。CSSは、セキュリティ・システムやソフトウェア製品を50年以上にわたって手掛け、政府機関や軍などに提供してきた部門だ。Lynch氏は、「これらの技術をエッジデバイスに組み込み、例えばバイタルデータを取得するセンサーなどについては、まったく新しい方法で本人確認ができるようなセキュリティ技術を搭載していく」と話す。同氏は、詳細は明らかにしなかったが、センサーにハードウェアのルート・オブ・トラスト(信頼の基点)を搭載するという。
ADIは現在、Linear Technology(リニアテクノロジー)の買収作業を進めているが、IoT分野における両社の相乗効果について、「主に2つある。まず、Linear Technologyは電源技術に強みを持っているので、ADIの製品と組み合わせて超低消費電力なIoT製品や、環境発電技術を搭載した製品を開発できる。もう1つは、Linear Technologyが2011年に買収したDust Networks(ダスト・ネットワークス)の無線センサーネットワークビジネスだ。このセンサーネットワークはメッシュ型なので、(通信範囲が広くて障害に強いといった点で)IoTに非常に適している」と説明した。
デモでは、ADIのIoT開発向けセンサープラットフォーム「FastStart IoT」も展示した。ARMの「Cortex-M3」をベースにADIが開発した低消費電力マイコン「ADuCM302x」や加速度センサー、「Mikrobus」対応のコネクター、Wi-SUN対応のRFモジュールなどを搭載したボードである。RFモジュールは現時点ではWi-SUN対応のみだが、Lynch氏は、いずれWi-Fi、Bluetooth Low Energy(BLE)、NB(Narrow-Band)-IoT、Sigfoxなどに対応したRFモジュールもそろえていくとしている。
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