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IoTへの投資を加速するADI、エコシステムを重視SEMICON Japan 2016レポート(2/2 ページ)

» 2016年12月19日 13時45分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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Dell EMCとの実証実験

 この他、2016年10月には、Dell EMCとともに、救急隊員の体調(バイタルデータ)と位置を把握する技術の実証実験(Proof of Concept)を行ったと発表した。救急隊員に、心拍などのバイタルデータを取得するためのスマートセンサーを搭載したベストと、位置情報センサーを搭載したブーツを身に着けてもらい、リアルタイムでデータを取得する。全米防火協会(NFPA:National Fire Protection Association)が2016年10月に発表したデータによると、2015年における消防士の負傷件数は約6万8000件だという。そのうち27%が、過度な緊張や疲労の蓄積など、実際の消火活動とは無関係な要因によるものだ。今回の実証実験は、救急隊員のバイタルデータと位置情報をリアルタイムにトラッキングすることで、そうした負傷事故を防ぐことを目的としている。

救急隊員を守ることを目的とした、ADIとDell EMCの実証実験。スマートベストは、カナダのHexoskinの製品(クリックで拡大) 出典:ADI

ハードウェアのルート・オブ・トラスト開発へ

 さらに、セキュリティ技術の分野では、2016年8月にSypris Electronicsのサイバーセキュリティ・ソリューション(CSS)部門を買収すると発表した。CSSは、セキュリティ・システムやソフトウェア製品を50年以上にわたって手掛け、政府機関や軍などに提供してきた部門だ。Lynch氏は、「これらの技術をエッジデバイスに組み込み、例えばバイタルデータを取得するセンサーなどについては、まったく新しい方法で本人確認ができるようなセキュリティ技術を搭載していく」と話す。同氏は、詳細は明らかにしなかったが、センサーにハードウェアのルート・オブ・トラスト(信頼の基点)を搭載するという。

 ADIは現在、Linear Technology(リニアテクノロジー)の買収作業を進めているが、IoT分野における両社の相乗効果について、「主に2つある。まず、Linear Technologyは電源技術に強みを持っているので、ADIの製品と組み合わせて超低消費電力なIoT製品や、環境発電技術を搭載した製品を開発できる。もう1つは、Linear Technologyが2011年に買収したDust Networks(ダスト・ネットワークス)の無線センサーネットワークビジネスだ。このセンサーネットワークはメッシュ型なので、(通信範囲が広くて障害に強いといった点で)IoTに非常に適している」と説明した。

IoT開発向けのセンサープラットフォーム

 デモでは、ADIのIoT開発向けセンサープラットフォーム「FastStart IoT」も展示した。ARMの「Cortex-M3」をベースにADIが開発した低消費電力マイコン「ADuCM302x」や加速度センサー、「Mikrobus」対応のコネクター、Wi-SUN対応のRFモジュールなどを搭載したボードである。RFモジュールは現時点ではWi-SUN対応のみだが、Lynch氏は、いずれWi-Fi、Bluetooth Low Energy(BLE)、NB(Narrow-Band)-IoT、Sigfoxなどに対応したRFモジュールもそろえていくとしている。

左=IoT開発向けセンサープラットフォーム「FastStart IoT」(赤い矢印)。写真は、装置に取り付けた振動センサーとFastStart IoTを接続し、装置の振動データをリアルタイムで計測するデモ/右=「WORLD OF IOT」で展示した、心拍数を測定するスマートウォッチ。LEDの緑色の光を動脈の血流に当て、反射した光の量との差分から、心拍数を計算している。ADIの光センサーやA-DコンバーターIC、マイコンなどが搭載されている(クリックで拡大)

SEMICON Japan 2016

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