Maxim Integrated Productsは2017年1月、自動車用途向けにアンテナ近くにラジオチューナーを配置するシステム技術を開発し、同システムを実現するIC製品群の販売を開始した。
Maxim Integrated Products(マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ/以下、Maxim)は2017年1月、自動車のヘッドユニットの設計を簡素化するラジオチューナー技術「リモートチューナーソリューション」を発表した。従来ヘッドユニットに内蔵していたラジオチューナーをアンテナ近傍に配置できるソリューションであり、「チューナーに割いていたヘッドユニット内のスペースを、ADAS(先進運転支援システム)など新たな機能に活用できるようになる」(同社自動車部門マネージングディレクターWilliam Chu氏)といった利点を提供する。
現状、自動車におけるラジオチューナーは、ダッシュボードに位置するヘッドユニット内に搭載される。Chu氏は、「ヘッドユニットにチューナーを置くこれまでのシステム構成は、大きく3つの課題を抱えてきた」と指摘する。
課題の1つは、ヘッドユニットの設計の複雑化だ。「ヘッドユニット自体のサイズは、標準化され限られている。その一方で、ADASなど新たな機能の搭載が必要になり、限られたスペースに、チューナーを含めた多くの機能がヘッドユニットの設計を難しくしている」という。
2つ目には、アンテナとヘッドユニットを結ぶ配線でのノイズ影響を挙げる。「配線は、アナログ接続であり、ノイズを拾いやすく、ラジオとしての性能を落とす要因になっている」。そして3つ目として配線ケーブル本数の多さを指摘する。「自動車1台当たりに搭載されるアンテナ数は、平均すると4本程度。アンテナ数に応じて、ヘッドユニットと結ぶケーブルが必要で、車両の重量増の一因になっている」。そして、Chu氏は、「自動車メーカーは、車種や仕向け地ごとに、こうしたチューナーの課題に対処しているのだ」と付け加える。
Maximが発表したリモートチューナーソリューションは、こうした従来のチューナーシステム構成が抱えた課題を全て解消する技術として開発された。新技術の最大の特長は、チューナーをアンテナ近傍に配置する点にある。ヘッドユニットからチューナーの存在を消すことで、ヘッドユニットに“ゆとり”を与えることができる。
アンテナとチューナーの距離が大幅に縮まることで、ノイズ影響を大幅に排除でき、ラジオ性能を高めやすいという利点も生まれる。
ただチューナーをアンテナのそばに配置するだけでは、“アンテナ+チューナー部”とヘッドユニットの配線は残り、配線ケーブル数の多さなどの課題は解消されない。「一部、アンテナ近傍にチューナーを配置するための競合ソリューションが存在するが、その多くはアンテナ、チューナー部とヘッドユニット間は、従来通りアナログ接続であり、ケーブル本数の多さやノイズ影響といった課題解消には至っていない」という。
そうした中で、Maximは、民生機器をはじめ、車載分野でも「少なくとも5年以上の市場実績がある」という独自シリアル通信技術「GMSL」(ギガビットマルチメディアシリアルリンク)などを応用し、1系統の同軸ケーブルで、ヘッドユニットと複数のチューナーをデジタル接続するシステムを実現。ケーブル本数の削減、ノイズ影響の排除を可能にした。
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