EETJ ワイヤレスによる接続技術が広がれば、TEにとってはマイナス要素となりますか。
上野氏 いいえ。TEはワイヤレスアプリケーションに対し、アンテナを展開しておりカバーできている。まず、Wi-Fiの車載向けアンテナからビジネスを始めたわけだが、現状、LTE対応の車載アンテナを強化している。同時に、これまで、車外に設置されるアンテナを車室内に設置し、衝突事故などが起きても(アンテナが外れ)通信を確保したいというニーズがあり、携帯電話機、スマートフォン向けで培ってきた小型化技術、高感度化技術をベースにそうしたニーズに応えられるアンテナ製品の開発を進めている。
EETJ 車載向けコネクターで2017年注力される製品などについて教えてください。
上野氏 1つは、高速通信に対応したコネクターになる。どのようなケーブルで高速通信が実現されるのかは、既存の電線ケーブルなのか、ツイストケーブルなのか、光ケーブルなのかは分からないが、いずれにしても、多くのカメラやレーダーを搭載するために、多くの通信量を、瞬時に処理する必要があるのは確かだ。ここでも、スマートフォンなど民生機器向けを手掛けてきたビジネスユニットと連携し、高速通信対応製品を開発し、プロモーションを強化している最中だ。
民生機器向けに培った技術展開は、車載向けに限らず、ロボットやAI(人工知能)向けでも実施している。
EETJ スマートフォンなどの民生機器市場で培った技術をベースに、自動車市場を狙う競合が増えています。そうした競合と比較した場合のTEの強みとはどこにありますか。
上野氏 まず、強みとして大きいのが、自動車市場において、長年にわたりリレーションを築き、自動車市場で求められるビジネスプロセスを習得しているという点にある。車載市場では、単純に新製品を開発提供するだけでは不十分。例えば、日本の自動車市場の顧客に対しては、日本で新製品を開発し、日本で生産を立ち上げて、その数年後には海外現地で生産、供給するというプロセスが求められ、TEはそうしたビジネスプロセスに対応できる。
他にも、北米や欧州の自動車市場でも多くのビジネス実績がある点も強みだ。日本の自動車メーカーの海外ビジネスに対し、日本で開発したもの以外に、TEが北米/欧州の自動車市場と連携し開発した製品、技術も提供できる。
もちろん、自動車市場で長く鍛えられてきた品質や信頼性、BCP(事業継続計画)などの面もTEの強みとして挙げられる。
EETJ 車載向け製品の生産では、国内の主力拠点である掛川工場とともに、主に日系顧客向けの製品を手掛けるタイ工場をTEジャパン主体で立ち上げられました。
上野氏 掛川工場については、数年先の次世代自動車向けの新しい製品の立ち上げに注力している。ただ、掛川工場はフル稼働状態が続いており、新製品を立ち上げる分だけ、既存製品をタイをはじめとした東南アジアや中国の工場へと移管を進めている。
特に日系顧客と関わりの深いタイ工場については、2015年に立ち上げたわけだが、既にスペースとしては80%程度を使った稼働状況にある。タイ工場では、日本からの移管生産だけではなく、現地でビジネスを獲得し開発した製品の生産も展開する計画であり、近く、生産能力が足りなくなることが見込まれる。今すぐ、というわけではないものの、タイ工場は、現建屋よりも大きな建屋を建てられる敷地があるので、2019年頃の稼働をメドに、工場の拡張を検討、準備していきたい。
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