東北大学とフランス原子力庁は、ウラン化合物強磁性体「UCoGe」の超伝導発現機構を解明した。新タイプの超伝導発現機構が明らかになったことで、新たな超伝導材料の開発に弾みがつくものと期待される。
東北大学金属材料研究所の青木大教授は2017年2月、CEA-Grenoble(フランス原子力庁)のJean-Pascal Brison研究員及びBeilun Wu博士学生らとともに、ウラン化合物強磁性体「UCoGe」の超伝導発現機構を解明したと発表した。磁場に対して強い超伝導の発現機構が明らかにされたことで、新たな超伝導材料の発見、開発などに弾みがつくとみられている。
青木氏らは、超伝導と強磁性が共存する物質「UCoGe」の超伝導発現機構を明らかにするため、純度が極めて高いUCoGeの単結晶を育成した。その上で、この材料の電気抵抗や熱伝導度といった輸送現象及び磁化を、極めて低い温度と強い磁場の環境下で測定した。
測定結果によると、強磁性の磁気モーメントと平行に磁場を加えたときは、超伝導電子対が弱められた。逆に、磁場を垂直に加えたときは強められた。つまり、垂直に磁場を加えると、磁場に対し極めて強い超伝導を発現することが物性実験により分かった。
一般的に磁場を加えると超伝導は消えてしまう。ところが、UCoGeの場合は振る舞いがこれまでと全く異なり、磁場によって超伝導が安定化するという。これは、UCoGeが強磁性のゆらぎを超伝導電子対の起源としているためである。磁場を加える方向によって超伝導が強化されることから、磁性と相性のいい超伝導であることが分かった。
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