東北大学多元物質科学研究所の秩父重英教授らは、双葉電子工業の協力を得て、深紫外線(DUV)から緑色までの光を呈する新しい小型偏光光源を開発した。非極性面窒化アルミニウムインジウム(AlInN)薄膜ナノ構造を蛍光表示管(VFD)に搭載した。
東北大学多元物質科学研究所の秩父重英教授と小島一信准教授は2016年11月、非極性面窒化アルミニウムインジウム(AlInN)薄膜ナノ構造を用いることで、深紫外線(DUV)から緑色までの光を呈する新しい小型偏光光源を開発したことを発表した。双葉電子工業の協力を得て実現した。DUV光源は医療や消毒、殺菌用光源などの用途でも注目を集める。
III族窒化物半導体(Al、Ga、In)Nは、1.55nmの光通信波長から200nm台のDUV波長まで発光することが可能な禁制帯幅(Eg:バンドギャップエネルギー)を持つ材料である。特に近年は、InGaNを用いた高輝度青色/緑色LEDなど革新的な製品が登場している。
秩父氏らは今回、本質的に混ざりにくく、結晶成長が困難といわれているAlInN混晶を、「非極性m面」にエピタキシャル成長させた。一般的な青色LEDで用いられる「c面」とは異なる結晶面を利用する。しかも、AlInNの結晶成長に、MOVPE(有機金属気相エピタキシャル成長)法を用いるに当たっては、装置形状や成長条件を最適化した。これによって、InNモル分率が0〜32%程度となるAl1-xInxNの結晶成長に成功した。
ところが、高AlNモル分率のAlGaN混晶と同様に、p型結晶を作るのは困難とみられている。このため秩父氏らは、双葉電子工業の協力を得て、蛍光表示管(VFD)にAlInNを搭載した。VFDはp型層を用いなくても発光させることができるからだ。
AlInNを非極性m面にエピタキシャル成長させ、その薄膜ナノ構造をVFDに搭載することによって、波長215nm程度のDUV光から緑色までの光を呈する小型偏光光源の開発に成功した。こうした工夫を行うことで、UVや可視光源という用途にとどまらず、液晶バックライトなどにも用いることが可能になるという。
秩父氏らは今後、開発した光源の効率改善や低コスト化、高信頼性化にも取り組み、青色LEDを超える波長260〜280nmの高効率DUV固体光源として、その可能性を広げていく。
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