イーサネットスイッチ市場で圧倒的優位を誇るBroadcom。そのBroadcomに挑むのが、台湾MediaTekからスピンアウトしたNephosだ。
イーサネットスイッチ市場では現在、Broadcomが優位性を確立していて、同社に対して挑戦を試みる新興企業はほんの一握りにすぎない。
しかし、その中の1社であるNephosが、米国カリフォルニア州サンタクララで2017年3月8〜9日に開催中の年次イベント「Open Compute Project(OCP)」において、これまで知られていなかったその存在を明らかにしたようだ。Nephos(ギリシャ語で「雲」の意)は、台湾のMediaTekからスピンアウトした企業で、今後、TSMCのパッケージング技術を新たなレベルへと押し上げる存在になるとみられている。
米国の市場調査会社The Linley GroupのアナリストであるBob Wheeler氏は、「10〜40Gビット/秒(Gbps)の商用イーサネットスイッチチップ市場は2015年に、6億8700万米ドル規模に達した。Broadcomはこうした中で、同市場において94.5%という圧倒的なシェアを獲得している。Nephosは、同市場の一部のシェア獲得を目指す新興企業3社の中で、最も新しい企業であり、主流派となる代替技術を提供できる可能性が一番高いとみられている」と述べる。
OCPは、Facebookが、肥大化するデータセンターの要望に対応すべく、オープンソースハードウェア関連の標準規格を推進するために始めたイベントである。その後、MicrosoftやGoogleも参加するようになった。
Nephosは、3.2Tビット/秒(Tbps)のスイッチ「Taurus」を開発していて、1つのソフトウェアスタックで4つの市場分野に対応できるようにしたい考えのようだ。1.08Tbpsおよび1.8Tbpsのチップを提供することができる他、TSMCのパッケージング技術「InFO(Integrated Fan Out)」を適用して2つのダイを集積したことにより、Broadcomが2016年10月に発表したフラッグシップ製品「Tomahawk II」に匹敵する、6.4Tbpsを実現することが可能だという。
これまでTSMCのInFOは、Appleの「iPhone」向けアプリケーション・プロセッサ「Aシリーズ」のような、より小型のチップに適用されてきた。3.2Tbpsのイーサネットスイッチは、よりサイズが大きく、発熱も大きいと、Wheeler氏は説明する。
Nephosは、このような大規模な最新型チップにInFOプロセスを適用することで生じるリスクについては、計算済みのようだ。
Nephosでマーケティング担当責任者を務めるJessica Koh氏は、「現時点で得ているフィードバックによれば、InFO技術を適用したテストチップが完成し、Cisco Systems(以下、Cisco)の研究所で行った試験もパスすることができた」と述べている。同氏はかつて、BrocadeのIP(Internet Protocol)ネットワーキンググループでプロダクトマネジメント部門の責任者を務めた経歴を持つ。
パッケージング技術を専門とするTechSearch Internationalのプレジデントを務めるJan Vardaman氏は、「2017年中に、データセンター向けアプリケーションのような、InFO技術に注目したさまざまなアプリケーションが登場するとみられる」と述べる。
同氏は、「InFO技術では、ダイを一列に並べて配置し、チップの上部または下部の再分配層を使用して取り付ける。これにより、シグナルインテグリティを高め、ノイズや消費電力量を低減することが可能だ」と説明する。
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