「中国版インダストリー4.0」ともいわれる「中国製造2025」を推し進める中国。その戦略の中で鍵となるのが産業用IoT(モノのインターネット)だ。
中国政府は、2020年までに国内の産業用IoT(産業用モノのインターネット、以下IIoT)が4500億人民元(約7.3兆円)に成長し、中国のIoT市場全体の約4分の1を占めるようになると予測している。中国のIIoT分野は、25%以上の成長率を維持している。
現時点では中国企業は「インダストリー3.0(第3次産業革命)」の段階にあり、特にコスト管理や生産効率、プロセス管理において改善すべき点が多い。
中国政府はこうした状況の中、IIoTの成長を推し進めようとしている。
中国は近年、省エネとグリーン環境保護を推進する中で、製造プロセスの改善を進めてきた。中国工業情報化部(MIIT:Ministry of Industry and Information Technology)は、2009年に策定したIoT戦略「センシングチャイナ」を基に、2012年に「IoT 第12次5カ年計画」を発表した。さらに、中国の李克強首相は2015年、中国版「インダストリー4.0」といわれる製造業発展政策「中国製造2025」を策定している。
中国製造2025では、情報技術と製造技術のデジタル化と融合、将来的な発展の礎となる知的生産システムの構築を目標に掲げている。中国はこの目標の下、今後10年間で“製造大国”から“製造強国”への転換を目指す。
中国のIIoT産業チェーンは主に、センサーやRFID、半導体などの部品メーカー、システムインテグレーター、インターネット事業者(通信事業者)、サービスプラットフォームプロバイダーで構成される。
中国のIIoT構築に向けた取り組みは、まだ初期段階だ。だが、IIoTアプリケーション環境が整備され、アプリケーションを求める声が高まっていることから、中国のIIoT分野は消費者向けIoTアプリケーションよりも急速に発展している。こうした中、当面の覇者となるのは部品メーカーやシステムインテグレーターだ。業界の成長と共にサービスに対する需要が高まれば、ネットオペレーターやサービスプラットフォームプロバイダーも利益を享受し、IIoT市場を支える主要企業に成長すると予想される。
中国のIIoTの成長を示す明確な指標の1つとなるのは、数値制御(NC)装置の成長率だ。大規模企業では、NC装置の採用が増えている。NC装置市場は、中国の第13次5カ年計画の間に毎年3.3%成長すると予想される。
中国では、IIoTは知的生産プロセスやマスカスタマイゼーション、クラウド製造プラットフォーム、共同製造、共同イノベーションプラットフォーム、B2B(Business to Business)産業eコマース、知的製品開発ツールといったさまざまな形で導入されている。
産業分野では、インターネット技術やコネクティビティは、製造プロセスにおいて、製品の品質や生産の効率を向上するために使われている。
中国では、インターネットサービスと産業向けアプリケーションの両方がともに進化し、より幅広い用途を生み出すことが期待されている。
例えば家電メーカーのHaierが中国・瀋陽市に所有する製造工場は、インターネットに接続された工場だ。ここでは冷蔵庫が作られているが、Haierは、工場をインターネットに接続することで、顧客のニーズに細かく応えられるフレキシブルな製造プロセスを開発し、500モデル以上もの冷蔵庫を製造しているという。
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