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首都大学東京、導電性ポリマーの精密合成法開発光機能材料開発の基盤技術(1/2 ページ)

首都大学東京の野村琴広氏らは、優れた光機能を発現するπ共役ポリマーの精密な合成法を開発した。

» 2017年03月30日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

有機EL素子や有機太陽電池などの発展を支える

 首都大学東京の大学院理工学研究科で教授を務める野村琴広氏らは2017年3月、優れた光機能を発現するπ共役ポリマーの精密な合成法を開発したと発表した。有機EL素子や太陽電池などに用いる新たな光機能材料を設計/開発するための基盤技術になるとみられている。

 π共役ポリマーは、電子伝導性や発光特性に優れた高分子半導体である。その特性を決めるのは、繰り返し単位(主鎖)の種類や長さ(共役長)だけでなく、ポリマー末端の化学状態も大きくかかわっていることが分かっている。このため、高機能材料を設計/開発するには、末端の均質化や特定の官能基の導入など、末端官能基を制御することが重要になるという。

 野村氏らによる研究グループは、ポリマーの合成手法として「オレフィンメタセシス反応」に着目。これまで、ルテニウム触媒を用いたオレフィンメタセシス重合法の開発に成功してきた。この手法を用いると、従来の「脱ハロゲン化重縮合」や「カップリング反応」による合成手法で課題となっていた、構造欠陥や立体規則性の低下などを解消することができるという。

ルテニウム触媒を用いたオレフィンメタセシス重合法(上部)と従来法(下部)の比較 (クリックで拡大) 出典:首都大学東京、科学技術振興機構(JST)

 この合成手法は不純物の混在が少なく、環境負荷も低いという特長がある。合成した後に、別の触媒反応を用いれば、ポリマーの両末端に目的の官能基を高い効率で導入することもできる。ところが、π共役ポリマーの2つの末端に、それぞれ異なる官能基を導入するための手法がこれまではなかった。

 そこで研究グループは今回、モリブデン触媒を用いたオレフィンメタセシス重合法について、詳細な検討を行った。具体的には、オレフィンメタセシス重合法を用いてπ共役ポリマーを合成。これに対して、ポリエチレングリコールを結合させる反応(グラフト化)や、異なる2種類の高分子を組み合わせたトリブロッコポリマーの合成反応を用いて末端の状態を特定した。

モリブデン触媒を用いたオレフィンメタセシス重合法 (クリックで拡大) 出典:首都大学東京、科学技術振興機構(JST)

 この結果、ルテニウム触媒を用いた場合と同じ特長が得られるとともに、2つあるπ共役ポリマー末端のうち、片側のみにモリブデンと炭素の2重結合(触媒活性種)を導入できることが分かった。この触媒活性種は、別の触媒反応で目的の官能基に置き換えることができる。このため、π共役ポリマー末端の片方のみに、ほぼ100%の確率で目的の官能基を導入することが可能になったという。

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