さらに、「AI技術」という概念を理解している人であっても、そのAIの技術内容の理解が目もくらむほどデタラメだったりします。
例えば、
(1)遺伝的アルゴリズム(GA)が、新しい解を見つけ出して、人類滅亡を……(以下省略)
GAについては、第7回の「抹殺する人工知能 〜 生存競争と自然淘汰で、最適解にたどりつく」で紹介しましたが、いくらGAと言えども、解空間の外側まで解探索できる訳がありません(そもそも、私には「『人類滅亡』を包含する解空間というのが観念できない)。
(2)エキスパートシステムが、人類滅亡が合理的な解答であると判断して……(以下省略)
エキスパートシステム(「笑う人工知能 〜あなたは記事に踊らされている〜」参照)が、どんなに努力しても、「人類滅亡」というルールのないシステムで、そのルールを導出することがでる訳がありません。
(3)ディープラーニングの「教師なし学習」によって、人類滅亡という解が……(以下省略)
……おい、お前、「教師なし学習」の意味、全然理解せずに使っているだろう*)
*)「教師なし学習」については、この連載の終盤で、あなたが「うんざり」するほど説明させて頂く予定です
前回のコラムで、私は「100冊の人工知能の本を読んでも時間の無駄です。最もてっとり早いのは、100行のプログラムを自分で書くことです」と言いましたが、プログラムの経験のない人に、私はそこまでは要求しません。ですが、少なくとも「人工知能脅威論」を論じるなら、せめて、勉強くらいしてこい、と言いたいです。
私だって、1つのAI技術を「あ、なんか分かった様な気がする」と感じられるようになるまでに、往復3時間の通勤電車の中で、1週間くらいぶっ続けで勉強するくらいの努力はしていますので、こういう「無勉強」な本を読むと、いつでも、こんな気持ちになります。
―― 舐めんなよ
前述の占い師の話ではありませんが、なにより、私が憤慨していることは、―― うそでも、作り話でも、イカれた話でも、一切構わないのですが ―― 一本、筋の通った「人工知能による人類滅亡シナリオ」を、彼ら(著者)が持っていないことです。
おおむね、彼らの文章の構成はこんな感じになっています。
(A)「○○という技術がある」→
(B)「△△大学の××教授によれば、○○という使い方が可能であるという」→
(C)「これを発展させていけば、近い未来に、人類を滅ぼせるだけの脅威となろう」
では、1つずつ突っ込んでみましょう。
という観点の記述が、ない、皆無、絶無。
そこで今回、私は、(本当に面倒でしたが)AI技術の一つ一つについて、検証してみました。結果は以下の通りです。
単一のAI技術で無理なら、これらのAI技術を組み合わせれば、人類を滅亡させられるかというと ―― 当然、無理に決まっています。
情報処理試験を受けたことがある人なら知っていると思いますが、「複数の技術はそれを組み合わせることで、最も懦弱な技術の性能に引っ張られる」ことは、システム論の常識です。
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