それはさておき。
上の表に「演繹学習」と「帰納学習」という学習方式が出てきましたが、これ、結構重要なので、簡単にもう一度説明します。
<演繹学習の例>
「上司はウザい。私は部署を異動した→(演繹学習)→ならば、異動後も、その後の異動後も、その後も、死ぬまで全ての上司はウザいであろう」
<帰納学習の例>
「異動前の上司はウザかった。その異動の前の上司もウザかった→(帰納学習)→ならば、移動後の上司もウザいであろう」
学習から導かれる結論は同じなのですが、演繹学習は、1つの理屈を複数のケースに当てはめていく感じで、帰納学習は、たくさんのケースから1つの理屈を導き出す、という感じになります。
さて、本日ご紹介する「バージョン空間法」は、機械学習の中でも、この帰納学習を行うAI技術です。
「バージョン空間法」のアルゴリズムはこんな感じになっています。
このバージョン空間法を、暴力的なまでに単純化すると、こういう感じです。
コンピュータ:「0〜10までの間の1つの整数を決めてください」
江端:「決めました」
コンピュータ:「それは5以上ですか」
江端:「はい」
コンピュータ:「それは7以下ですか」
江端:「いいえ」
コンピュータ:「それは8以上ですか」
江端:「はい」
コンピュータ:「それは8以下ですか」
江端:「はい」
コンピュータ:「あなたの決めた数字は"8"です」
こんな感じのやりとりを、もっと複雑な条件下で実施し、できるだけ少ない回数で、広大な解空間の中から、正解に到達するという解探索方式です。
今回、バージョン空間法について調べてみたのですが、第二次ブームのエキスパートシステムで使用されたという論文があるだけで、具体的なアプリケーションが発見できませんでした(Google検索で287件)。
「YES・NOだけを使う対話型AI技術」というところが、いかにもエキスパートシステムっぽいのですが、そのエキスパートシステム自体が、ほぼ全滅している状況(「陰湿な人工知能 〜「ハズレ」の中から「マシな奴」を選ぶ」)ですから、仕方ないかもしれません。
しかし、この「バージョン空間法」の考え方は、コンピュータの世界ではなく、私たちの現実の世界で役に立っているのです。
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