EE Times Japanでは、組込みシステム技術協会(JASA)とスキルマネージメント協会(SMA)が推進する「IoT技術高度化委員会」とコラボレーションし、連載「JASA発IoT通信」をお届けしていく。連載第1回目は、同委員会で主査を務める竹田彰彦氏のインタビューを紹介する。
あらゆるセンサーやモノがインターネットとつながり、産業に新たな価値をもたらそうとしている「IoT(モノのインターネット)」。その言葉を見ない日がないと言っても過言ではないほど、その期待度は大きい。まさに“バズワード化”だ。一方で各社によって解釈が異なり、実態が見えにくいという人も多いのではないだろうか。
IoTに必要なのは組み込み、デバイス視点と掲げるのが、組込みシステム技術協会(JASA)とスキルマネージメント協会(SMA)が推進する「IoT技術高度化委員会*)」である。有識者を招いた勉強会やサービス事例を題材とした議論、具体的なテーマに応じたワーキンググループ(WG)によるワークショップに取り組んでいる。
*)2016年度までは「IoT技術研究会」という名称だった。
EE Times JapanではIoT技術高度化委員会とコラボレーションし、2017年4月から寄稿連載「JASA発IoT通信」をお届けしていく。連載第1回目は同委員会で主査を務める竹田彰彦氏に、設立の背景や目指す方向性、これまでの取り組みなどについて話を聞いた。
EE Times Japan(以下、EETJ) まず設立の背景について聞かせてください。
竹田彰彦氏(以下、竹田氏) IoTがバズワードとなる一方で、具体的なイメージが全然湧かなかった。それに加えてクラウドやビッグデータといったIT目線で語られることが多い。GoogleやAmazonなど北米企業が先行しており、その中で日本が勝ち抜くためには組み込み、デバイス視点でIoTを議論することが重要なのではないか。家電の勢いはなくなってしまったが、製造業は日本が強みを持っていた分野だからである。
1兆個のセンサーがインターネットにつながるといわれ、具体的なサービスも少しずつ登場している。しかし「センサー企業がもうかって仕方がない」といった声はさっぱり聞こえてこない。誰がセンサーを買ってくれるのか、誰が設置するのか、電源はどうするのか、保守・メンテナンスはどうするかなど組み込み視点の課題を考えなければならない。このような問題意識から、2015年にIoT技術高度化委員会を設立した。
EETJ 日本がIoTで勝つためには、組み込み視点が重要ということですね。
竹田氏 SMA(スキルマネージメント協会)と一緒に取り組んでいるのは、IoT時代に求められるスキルも変化すると考えたからである。組み込みのスキルだけでは足りない。IT系のスキルも必要だが、両方の知識があるから通用するとも限らないだろう。つまり技術的なスキルが備わっているから、新しいサービスを創造できるのではないということだ。IoT時代のスキルをもっと違う形で定義する必要があると感じた。
EETJ “組み込み視点のIoT”とは何を指しますか?
竹田氏 シスコシステムズが提唱する“IoTの7階層”から考えたい。4階層から上のクラウド部分は残念ながら、GoogleやAmazonといった米国企業に負けてしまっている。組み込み視点のIoTでは、3階層から下の「エッジコンピューティング」「コネクティビティー」「さまざまなデバイス」を議論しなければいけない考えている。
考え方として共感しているのは、神戸大学教授の三品和広氏が語った『センサーは「部品」ではなく「データ」を売れ』(日経ビジネスオンライン、2016年4月掲載)である。現在はクラウド側に収益が集中する仕組みとなってしまっているが、収益を分配するモデルを構築しないとセンサー企業は疲弊してしまうといった考え方だ。このように共感できる情報を集めて、IoT技術高度化委員会では勉強会を行ってきた。
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