九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)の研究グループが、従来比100倍となる30ミリ秒の有機薄膜レーザーの連続発振を可能にした。将来の電流励起型有機半導体レーザーを実現する大きな一歩となる。
九州大学の最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)は2017年5月1日、紫外線励起による有機薄膜レーザーの連続発振時間として世界最長の30ミリ秒を実現したと発表した。今回の研究成果は、連続発振時間が従来の100倍となったことを意味しており、将来の電流励起型有機半導体レーザーの実現に向けた大きな一歩となる。
今回、研究の対象としたのは光励起型の有機薄膜レーザーだ。有機レーザー活性層とDFB(Distributed feedback)構造を含む光共振器により、可視域から赤外域全域にわたる広範囲の波長を任意に発振できるという、無機レーザーにはない特徴がある。しかし、有機分子によるレーザー光の吸収、有機レーザー活性層での熱劣化と光損失が、連続発振時間を大きく制限していた。そこで、OPERAの研究チームは有機レーザーの発振を阻害する要因の除去に取り組んだ。
左から、合志 憲一助教、Jean-Charles Ribierre准教授、Fatima Bencheikh学術研究員、松島 敏則准教授、安達 千波矢教授、Atula S.D. Sandanayaka准教授 出典:九州大学レーザー光の吸収が大きいのは、有機レーザー分子を光や電流で励起することで形成される励起状態の1つである三重項励起状態が原因だった。そのため、三重項励起状態の吸収スペクトルとレーザー発振スペクトルの重なりが十分に小さい有機レーザー分子をレーザー活性層に用い、三重項励起状態によるレーザー光の吸収を弱めた。
熱劣化については、放熱性に優れた単結晶シリコン基板を有機薄膜レーザー素子の下層基板として、高分子材料を薄く接着したサファイアガラスを上部保護層として用いることで解決した。また、光共振器構造として最適化を行ったDFB構造を用い、従来報告されている有機レーザー発振閾値としては最も低い光損失値を達成した。
レーザー光の吸収、熱劣化、光損失の3つの課題を解決することで、光励起による連続発振型の有機薄膜レーザーが実現した。OPERAの研究チームは今後、有機分子の励起状態のさらなる学理の解明とともに、電流励起レーザーの実現を目指すとしている。
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