東京大学生産技術研究所の野村政宏准教授らは、固体中で熱流を一点に集中させる「集熱」に成功した。新たな熱制御方法として期待される。
東京大学生産技術研究所の野村政宏准教授らは2017年5月、固体中で熱流を一点に集中させる「集熱」に成功したと発表した。開発した熱流方向制御技術と集熱技術を用いると、より高度な熱制御が可能となるため、半導体チップなどへの応用などが期待される。
今回の成果は野村氏の他、東京大学特別研究員で日本学術振興会外国人特別研究員のRoman Anufriev氏および、Aymeric Ramiere氏らの研究チームによるものである。
固体中の熱伝導は、熱を運ぶフォノンが移動して生じる現象であり、フォノン同士の衝突によって輸送特性が決まる。このため、特定方向に熱を拡散することは難しかった。ところが、フォノンの平均自由工程と同程度の小さな構造(ナノ構造)にすれば、フォノン同士が衝突する前に構造界面へ衝突するため、熱伝導を制御することができるという。
今回の研究では、厚さ150nmのシリコン薄膜に半径が100nmの円孔を空けた両持ち梁構造の試料を作製。また、光を用いて非接触に熱伝導を計測することができる高速測定システムも開発した。梁の中央にあるアルミ薄膜を光パルスで瞬時に加熱して、別のレーザーを使って温度変化を観測する。これによって測定対象の熱散逸時間を測定した。
従来の電気計測では、1cm角の半導体チップ当たり、測定対象の構造を数個しか用意することができないが、今回開発した光学測定法であれば、約1万個を用意することができる。このため、一度に多くの構造について測定することが可能となる。
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