今回のテーマは「テレビ」だ。価格競争主体のテレビ市場だが、テレビメーカー各社は大型化、高精細化を進めて成熟度の増すテレビ市場での生き残りを目指しつつ、新たな技術として有機ELテレビが登場している。
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市場調査会社であるIHS Markit テクノロジーのアナリストがディスプレイ、パネル関連産業を分析、展望するセミナーイベント「IHS ディスプレイ産業フォーラム」が2017年7月27〜28日の2日間、開催される。EE Times Japanでは、同フォーラムに登壇するIHSマークイットテクノロジーのアナリストにインタビューし、同フォーラムよりも一足先にディスプレイ、パネル産業の現状とこれからをお届けしている。
連載第3回となる今回のテーマはテレビ(完成品)だ。IHS Markit テクノロジー 上席アナリストを務める鳥居寿一氏に聞いた。
2017年の世界テレビ市場トレンドは、ひと言で言えば「テレビメーカーは、大型化と高解像度化を積極的に進める年」になる。
薄型テレビの歴史を少し振り返ると、10年ほど前は“液晶ディスプレイかプラズマディスプレイか”、“32型か40型か”などの対立軸が存在したが、結局、液晶テレビが生き残り、画面サイズも50型を超えるような大型化が進んだ。価格も随分と下がり、価格競争だけが市場トレンドのように見えてしまう成熟した市場になりつつある。
価格競争以外の部分では過去、3D表示機能や倍速表示機能、LEDバックライトといった新仕様も登場したが、結果的にそれらの機能は、樹木に例えるならば“枝葉”の部分での仕様に過ぎなかった。倍速表示などは一部存在しているが、このままいくと製品ごとの違いは分からなくなり、顧客が対価を支払うような付加価値ポイントがなくなってしまう。結局は、価格競争主体の市場となっている。
価格競争は今後も続くが、その中でも樹木の“幹”に相当する部分で、消費者が価値を見いだしやすく、少しでも価格に転嫁できる付加価値ポイントとして存在しているのは、大型化、高精細化であり、各テレビメーカーは積極的に大型化、高精細化を進めている。
大型化については、画面が大きいほど高いと消費者には分かりやすい価値である。
2017年1〜3月の出荷実績(台数ベース)を見ると、中国では全テレビの出荷台数に占める55型以上の大型テレビの割合は36%に及ぶ。そして中国同様、住居が広い北米が次いで高く30%だ。日本については約10%にとどまるが、全世界では、20%以上と右肩上がりで増えている。今後も世界的に大型化が進むのは間違いない。
とりわけ、中国と北米では55型以上のより大型のテレビ普及が進んでいくことになる。中国や北米における2017年で出荷ベースでの平均画面サイズは46型前後だが、これが2020〜2021年には、50型を超える予測だ。日本は現状30型を超える程度。いかに中国、北米で大型化が進んでいくかが分かってもらえるだろう。
現状、中国での55型テレビは3000元台、日本円にして6万円ほどの低価格製品が登場してきている。これも、2014年以降、中国のパネルメーカーが55型パネルを8枚採りできる8.5世代のラインを立ち上げてきたからこそ、価格が下がり、普及を促した。これと同様のことが、2018年以降、10世代ラインの投資により、65型テレビでも起こるとみている。
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