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NICT、超小型衛星で量子通信の実証実験に成功重さ50kg、大きさ50cm角(1/2 ページ)

情報通信研究機構(NICT)は、超小型衛星による量子通信の実証実験に世界で初めて成功した。実験に使用した衛星は重さ50kgで大きさは50cm角と、衛星量子通信用途では最も軽量かつ小型だという。

» 2017年07月12日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

「時刻同期」や「偏光軸整合」の技術を確立

 情報通信研究機構(NICT)は2017年7月、超小型衛星(SOCRATES)による量子通信の実証実験に世界で初めて成功したと発表した。実験に使用したSOCRATESは重さ50kgで大きさは50cm角と、衛星量子通信用途では最も軽量かつ小型だという。

SOCRATESとSOTAのイメージ図 出典:情報通信研究機構(NICT)

 SOCRATES(Space Optical Communications Research Advanced Technology Satellite)は、エイ・イー・エスが開発した衛星。この中にNICTが開発した小型光通信機器(SOTA)が搭載されている。SOCRATESは2014年5月に高度600kmの太陽同期軌道に投入された。その後、この衛星を用いて波長1.5μmのレーザーで光通信の実証実験に成功。2016年より量子通信の実証実験を行ってきた。

 今回は、SOCRATESに搭載されたSOTAから、10Mビット/秒の速度で光信号を地上局へ送信した。東京・小金井に設置されたNICT光地上局で、受信した光子信号を復元し、高度600kmを秒速7kmで高速移動する衛星との量子通信を実現した。

SOCRATESと光地上局の概要 出典:NICT

 地上局で受信した信号には、パルス当たり平均0.1光子という微弱なエネルギーしか含まれていないという。NICTは今回、この微弱な信号を低雑音で検出できる量子受信機を開発。さらに、微弱な光子検出信号から直接、衛星と地上局の時刻ずれを同期させる技術や、大気伝搬中に変化した光子の偏光軸を地上局で補正する技術も開発した。これらの技術開発により、超小型衛星による量子通信に世界で初めて成功した。量子暗号の基盤技術にもなるという。

NICT光地上局の概要写真 出典:NICT

 時刻同期や偏光軸整合の技術を駆使した量子通信は、中国などでも行われているが、これには重さが600kgの大型衛星が用いられている。これに対してNICTは、重さが50kgと従来の10分の1以下という小型衛星で実現した。これによって、多数の人工衛星を協調して動作させる「衛星コンステレーション」などにも容易に対応することができる。

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