DARPAは、ERIプログラムがターゲットとする3つの分野として、材料とアーキテクチャ、設計の自動化を挙げ、それぞれの詳細を記している。
材料の分野では、研究者たちが、超低消費電力メモリや、ロジックとメモリブロックを統合したアーキテクチャなどの基礎となる、シリコンを超える要素について、周期表を調査していく予定だという。また、光学コンピューティングやアナログ回路、受動部品、フォトニクス、不揮発性メモリなどの分野において、新たな扉を開くことが可能な、新しい材料の研究を進めていく。
こうした取り組みは、レーダーチップ向けのハイブリッドファウンドリープロセスを研究するプロジェクト「DAHI」や、SoC(System on Chip)向けの新しいモジュラーIP(Intellectual Property)ブロックを定義するためのプログラム「CHIPS」など、DARPAの既存プロジェクトの要素も引き付けることになるだろう。DARPAは、将来を見据えたプロジェクトの例として、3D(3次元)クロスバーアレイ構造や、メモリスタネットワーク、カーボンナノチューブ(CNT)コンピュータなどの取り組みを挙げている。
またERIは、チップアーキテクチャ分野に関しては、スマートコンパイラによってオンザフライで構築されたシステムなどのように、幅広い種類の新しい選択肢を追求していく予定だとしている。また、最近行われたACMイベントでパネリストたちが予測していた、さまざまな種類の領域特化型アーキテクチャも、ムーアの法則の鈍化に伴い台頭してくるとみられている。
設計の自動化に関しては、研究者たちは、「トランジスタのサイズが縮小するに伴い、物理的設計の複雑性が劇的に増大していることから、高度に専門的な大規模開発チームの設立や、高価なEDAツール、36カ月間の設計サイクルなどが求められている」と指摘する。
さらに、集積回路やパッケージ、ボードなどの人間非参加型(no-human-in-the-loop)の物理的レイアウト向けとして、マシンラーニング(機械学習)や検証ツールなど、代替手段の必要性についても訴えている。
DARPAは、「2016年にサポートしたプログラムでは、100万米ドルに満たない資金で、16nmプロセスで45億トランジスタチップのテープアウトを実現した」と主張する。このプロジェクトを率いたのは、起業家でありプロセッサ設計を手掛けるAndreas Olofsson氏だ。同氏は現在、ERIプログラムのマネージャーを務め、設計ツールの開発に注力している。
ERIは今後、DARPAと米国の半導体研究コンソーシアム(SRC:Semiconductor Research Corp)が共同で出資した「Joint University Microelectronics Program(JUMP)」を補完していく予定だという。DARPAによると、エレクトロニクスの基礎を構築する、最も大規模な大学研究活動の1つである。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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