過去数年間、大型買収が相次ぎ、M&Aの嵐が吹き荒れた半導体業界だが、2017年前半はその動きが一気に鈍化した。M&Aの総額はわずか14億米ドルと、2015年前半の726億米ドルから大きく減少している。
半導体業界では2年以上の間、M&Aの動きが活発化していたが、2017年前半になってこの動きが著しく減速している。これは、“メガディール(超大型取引)”がなかったことで、M&Aによる取引総額が減少したためだ。
米国の市場調査会社であるIC Insightsによると、2017年上半期に発表された十数件のM&A取引総額はわずか14億米ドルで、2016年上半期の46億米ドル、2015年上半期の726億米ドルから大きく減少した。
IC Insightsによれば、2016年のM&Aは出だしは遅かったものの、下半期に数件の大型買収が発表され、取引総額は過去最高を記録した2015年の1073億米ドルに迫る1000億米ドル近くに上った。現在交渉中である東芝のメモリチップ事業の売却を含め、交渉中もしくはうわさに上っている取引が数件あるとはいえ、2017年下半期の取引総額は2016年や2015年とは大きな開きが出るだろう。
2017年に入ってから現在までに発表された5億米ドル以上の取引は、2017年5月に完了したMaxLinearによるExarの買収(買収額は6億8700万米ドル)の1件のみだ。これに対し、2016年は取引額が10億米ドル以上の買収が7件、2015年は同規模の買収10件が実施された。このうち、7件は100億米ドル以上で、3件が2016年に、4件が2015年に発表されている。
IC Insightsでシニアリサーチアナリストを務めるRob Lineback氏は、EE Timesのインタビューの中で、「複数の要因が組み合わさったことで、2017年上半期のM&Aの低迷を招いた」と指摘した。同氏はその要因として、規制当局による審査の強化や、大型買収を実施した企業は買収した事業を整理しているところで、さらなる買収を進める段階には達していないことなどを挙げた。
Lineback氏は、「世界各国の政府は、こうした取引の多くを精査している。それによって、買収がさらに減る可能性がある」と述べている。同氏は、「米国や他の西欧諸国の政治情勢を踏まえると、中国企業は欧米企業の買収が難しくなり、買収に名乗りをあげることをためらうかもしれない」と付け加えた。
M&Aの総額が減少したもう1つの主な要因として、半導体メーカーが、半導体業界以外のメーカーの買収に乗り出していることが挙げられる。例えば、Intelは2017年3月にMobileyeの買収を発表したが、これはIC Insightsの統計には含まれていない。IC Insightsは、半導体メーカーがソフトウェアおよびシステム事業を買収した案件は除外しているからだ。Lineback氏は「とりわけIoTやVR(仮想現実)、自動化システムの分野では、こうした買収案件が増えている」と説明した。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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