今回は、強誘電体メモリ(FeRAM)の基本動作を解説する。FeRAMでは、強誘電体キャパシターにおける残留分極の向きがデータの値を決める。さらに、読み出し動作と微細化に伴う問題についても触れる。
前回は、強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)の研究開発の歴史を簡単に紹介した。今回は、FeRAMの基本動作を解説しよう。
不揮発性メモリに限らず、半導体メモリの基本的な動作は2つある。1つはデータの書き込み(ライト:write)であり、もう1つはデータの読み出し(リード:read)である。その背景には、データを記憶する原理が存在する。例えばDRAMではキャパシターの電荷の有無であり、SRAMではフリップフロップの論理値(高あるいは低)がデータの値を決める。
強誘電体メモリ(FeRAM)では、強誘電体キャパシター(強誘電体を絶縁膜とするキャパシター)における残留分極の向き(極性)がデータの値に相当する。例えば、残留分極の極性がプラス(正)のときに「0」、マイナス(負)のときに「1」と決める。
データ「0」を書き込むときは、プラスの電圧をキャパシターに印加する。逆にデータ「1」を書き込むときは、マイナスの電圧をキャパシターに加える。電圧の印加を止めた後でも、キャパシターには残留分極(電荷)が残る。
データを読み出すときは、プラスあるいはマイナスの電圧をキャパシターに印加する。例えば、プラスの電圧を加えるとしよう。データが「0」のときは、分極の状態はわずかに変動するものの、ほぼそのままである。従って電流はほとんど流れない。データが「1」のときは、分極が反転する。このため、大きな電流が流れる。この電流量の違いを検知することで、データを判別できる。
ここで留意すべきことは、分極の反転によってデータが変化してしまうことだ。読み出し動作の後で再度、データを書き込まなければならない。
言い換えると、読み出し動作により、蓄積してあるデータを破壊していることになる。このような読み出し動作を「破壊読み出し」と呼ぶ。破壊読み出しになるメモリには他に、DRAMがある。これに対して読み出し動作でデータが維持される動作を「非破壊読み出し」と呼ぶ。非破壊読み出しのメモリには、フラッシュメモリやSRAMなどがある。
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