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妨害波に強い802.15.4k、ラピスが対応LSIを開発日本の電波法と相性がよいLPWA(1/2 ページ)

ロームグループのラピスセミコンダクタがプレスセミナーで、同社一押しのLPWA無線通信規格であるIEEE802.15.4k(以下、802.15.4k)に対応した無線通信LSI「ML7404」を開発したと発表。さらに、LPWAの中で802.15.4kを支持する理由を説明した。

» 2017年08月09日 15時30分 公開
[辻村祐揮EE Times Japan]

妨害波に強いIEEE802.15.4k

 ロームグループのラピスセミコンダクタがプレスセミナーを開き、同社が関心を寄せるLPWA(Low Power Wide Area)無線通信規格であるIEEE802.15.4k(以下、802.15.4k)について解説するとともに、802.15.4kとSIGFOXの双方に対応した無線通信LSI「ML7404」を開発したことを発表した。

モジュールに搭載された「ML7404」(画像左上のチップ)。ラピスセミコンダクタがセミナーで展示した。ML7404は5×5mmのWQFNパッケージに封止されている

 同セミナーでは、ラピスセミコンダクタ LSI商品開発本部 ローパワーLSIビジネスユニットの野田光彦氏が登壇し、「IoTには通信速度を要しないケースが多く、低速だが低消費電力で長距離通信できるLPWAが最適となる。その中で最も有力なのは802.15.4kだ。そのため、802.15.4kにも対応した無線通信LSIを開発した」と語った。

 野田氏は、LPWAの中では比較的普及が進んでいるLoRaWANやSIGFOXと比較し、802.15.4kに注目する理由を説明した。同氏によると、長距離化の手段としてLoRaWANはCSS(チャープスペクトラム拡散)、SIGFOXはUNB(ウルトラナローバンド)を活用しており、妨害波の干渉を比較的受けやすい。一方、802.15.4kはDSSS(直接拡散方式)を採用したため、妨害波への耐性が高いという特長がある。

 DSSSでは、拡散信号を掛け合わせることで元信号を拡散する。そのため、伝搬信号は元信号と拡散信号が混ざった状態になる。それを受信するには、逆拡散で元信号に戻さなければならない。その際、鍵のような役割を果たすのが拡散信号だ。拡散時と同じ拡散信号で伝搬信号を逆拡散して初めて、元信号は復元される。

 拡散時の拡散信号と逆拡散時の拡散信号が異なる場合、元信号は復元できない。そのため、別の拡散信号で拡散した同一システムの伝搬信号(妨害波)は受信時に除外される。また、DSSSによる拡散を受けていない他システムの信号(妨害波)は、逆拡散で伝搬信号に変わり元信号ではなくなるため、これも排除できるという。

DSSS(直接拡散方式)の解説。黄色の拡散信号で拡散と逆拡散を行う系に、紫の拡散信号で拡散した信号(妨害波)が来ても、それを黄色の拡散信号で逆拡散するため、元信号に戻らない。注:色は説明上、便宜的に付けたもの 出典:ラピスセミコンダクタ(クリックで拡大)

 野田氏によると、LPWAでは同一システム妨害波が他の無線通信よりも多く、妨害波への耐性が一層重要だ。携帯の通信に使われる3G(第3世代移動通信)やLTEに比べると、LPWAは通信範囲が半径で3倍、面積で言うと10倍に及ぶ。人ではなく物をつなぐため、通信エリア内に収容する端末数も10倍になる。その分、同一システム妨害波が10倍に増える。

LPWAで同一システム妨害波が多い理由 出典:ラピスセミコンダクタ(クリックで拡大)

 そういった事情の下、他のLPWA無線規格は相応の対策を講じている。例えば、LoRaWANの場合は8本のRFアンテナを基地局に置き、妨害波による受信障害を防ぐ。しかし、アンテナを多く設置すると、基地局の消費電力は高くなる。一方、802.15.4kは元から妨害波耐性が高いため、基地局のアンテナが1本で済み、基地局の消費電力がLoRaWANほどかからない。野田氏は「これが、他のLPWA無線通信規格に対する802.15.4kの優位性だ」という。

802.15.4kとLoRaWAN、妨害波耐性の比較 出典:ラピスセミコンダクタ(クリックで拡大)
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