IEEEは、あらゆる分野で量子コンピュータを、より使いやすいものにするべく、量子コンピューティングの定義策定に向けてプロジェクトを立ち上げた。
IEEE内の国際標準化組織であるIEEE Standards Association(IEEE-SA)は、量子コンピューティングの定義策定に向けてプロジェクトを立ち上げた。
IEEE-SAが主導する量子コンピューティング定義の標準化プロジェクト「IEEE P7130」は、量子コンピューティングをソフトウェアやハードウェアの開発者や材料科学者、数学者、物理学者、エンジニア、気候科学者、生物学者、遺伝学者など、幅広い分野の研究者にとってより使いやすいものにするという高い目標を掲げている。
IEEE量子コンピューティングワーキンググループのチェアマンを務めるWilliam Hurley氏は、EE Timesのインタビューの中で、「IEEE P7130は、量子トンネルやスーパーポジション、量子もつれといった量子コンピューティングの物理学に関する用語を定義するとともに、技術の進歩に合わせてその他の関連用語や専門用語を改訂する」と説明している。同氏は、「量子コンピューティングにおける成長と進歩の加速に伴って、業界の断片化と通信フレームワークの欠如という問題が生じている」と指摘している。
IEEE P7130は、量子コンピューティング分野の幅広い研究者を集めて策定作業を進めている。策定メンバーには、量子情報技術で30年以上の経験を持つIBMや、量子コンピューティングハードウェア向けの汎用アルゴリズムの開発の他、従来型プロセッサや量子プロセッサ、非標準プロセッサの開発も手掛けるカナダの新興企業である1Qbitなどが名を連ねる。この他、東京工業大学の研究者も参加している。IEEE P7130への関心は高く、今後も参加者は増えると予想される。
Hurley氏は、「同ワーキンググループでは、新興企業、業界の伝説的な人物、大企業、学術界など量子コンピューティング分野の研究者が密接に連携しながら作業を進めている」と話している。
Hurley氏は、「量子コンピューティングのコミュニティーは現時点ではまだ小規模だが、急速に発展している」と付け加えた。米国の投資会社であるMorgan Stanleyは、「ハイエンドコンピューティング市場は、量子コンピュータの進歩によって今後10年間で倍増し、多くの分野に多大な影響を及ぼすと予想される」と述べている。最も影響を受ける業界やアプリケーションは、金融、医薬、エネルギー、航空宇宙、防衛、人工知能、ビッグデータ検索などだという。
Morgan Stanleyは、量子コンピューティングで有利なポジションにある企業として、IBMやGoogle、Microsoft、Nokia Bell Labsを挙げている。Googleは現在、20量子ビットのプロセッサのテストを行っていて、2017年末までに49量子ビットのチップを実用化する計画だという。Microsoftは、2016年末に量子コンピューティングへの投資額を倍増し、トポロジカル量子ビットと呼ばれる技術を使ってスケーラブルな量子ハードウェアとソフトウェアを開発する科学工学的取り組みを行っている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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